J1昇格プレーオフで名波、石崎、関塚の3監督の手腕争い
両チームを率いる指揮官も対照的だ。28日に42歳の誕生日を迎える名波監督の契約年数は、未経験者としては異例とも言える3年4カ月。手腕こそ未知数ながら、現役時代から卓越していた理論と古巣に寄せる深い愛情に、ジュビロが名門再建を託した証とも言える。 コンサドーレ戦では、終盤にボランチからFWに上がったフェルジナンドが起死回生の同点ゴールを決めた。2日前の紅白戦で初めて試した秘策を即導入する勝負度胸と、短い時間でパワープレーとは無縁だったジュビロの選手たちの意思をまとめるマネジメント力でチームの士気をあげた。 今シーズンからジュビロでプレーしている元日本代表MF松井大輔も、こんな言葉を残している。 「負けてリーグ戦を終えるのと、引き分けて終わるのとはやはり違う。追いついたということを、ポジティブにとらえていきたい」 一方、モンテディオを率いる56歳の石崎信弘監督は、前身であるNEC山形の監督に就任した1995年から途切れることなく監督やコーチを務めてきた。くしくも1995年は、名波監督が順天堂大学からジュビロに入団した年だ。 石崎監督は、柏レイソルとコンサドーレ札幌をJ1に昇格させた百戦錬磨の経験の持ち主であり、フィジカルとテクニックの基礎的なメニューを織り交ぜた「フィジテク」と呼ばれる独特の練習法でモンテディオを地道に強化してきた。前出の水沼氏は「夏場過ぎから質と量を伴ったトレーニングの成果が出てきた」とモンテディオの変化を指摘する。 「攻撃の要となるトップ下のディエゴは、特に体が絞れてきた選手の一人と言っていい。春先と比べて見た目が明らかに異なるし、運動量が増えて、走れるようになったことがチームを活性化させた。天皇杯を勝ち進んでいるモンテディオの場合は、スケジュールが問題となる。J2最終節から中2日で大阪へ移動して天皇杯準決勝を戦い、中3日で休養十分のジュビロ戦を迎える。その間の心身のコンディションをどのように整えていくのか。石崎監督の手腕が問われると思う」 ジェフとのJ2対決となった26日の天皇杯準決勝。モンテディオはヴェルディ戦の先発メンバーから、出場停止の1人を除いた10人をピッチに送り出すベスト布陣を編成。ゴールの奪い合いの末に、3対2で勝利した。ジェフは6人の先発メンバーを入れ替えたが、試合後に石崎監督はこう語っている。 「名誉ある大会の天皇杯なので、現状におけるベストメンバーで戦いたかった。J2の最終節でヴェルディに負けた悔しさを、選手たちがゲームで出してくれた。今日の勝利を次につなげていかないといけない。それは私の仕事だと思っています」 過密日程による疲労は、確かに蓄積されるだろう。それ以上に、チーム史上ではもちろん初めて、東北勢としても81年ぶりとなる天皇杯決勝進出という快挙を達成することで、J2最終節で黒星を喫した嫌な流れを断ち切りたいとする指揮官の意図が伝わってくる。