“東洋古美術の宝庫”出光美術館で、58年前の開館記念展を「復刻」。休館前・最後の一年は仙厓さんからスタート
1966年(昭和41年)の開館からおよそ300の展覧会を開催してきた東京・丸の内の出光美術館が、帝劇ビルの建替計画に伴って、2025年1月からしばらく休館します。最後の一年となる今年は「出光美術館の軌跡 ここから、さきへ」というテーマのもと、美術館のエッセンスともいうべき作品が、4回の展覧会で登場します。 【画像】禅画、古唐津、中国陶磁…出光興産創始者・出光佐三の蒐集した珠玉のコレクションが一堂に!(写真7枚) 4月23日からの「復刻 開館記念展―仙厓・古唐津・中国陶磁・オリエント」では、昭和41年の「開館記念展」で会場を飾った仙厓の書画や、中国の陶磁や青銅器、オリエント美術の作品が展示されます。 まずは、月を指さすなんともユーモラスな布袋について、出光美術館・編著『仙厓BEST100 ARTBOX』で詳しく見てみましょう。
58年前にタイムスリップ 「復刻 開館記念展」
江戸時代に「博多の仙厓さん」の愛称で親しまれた博多・聖福寺(しょうふくじ)の仙厓和尚。ほのぼのとしたその絵は、今でも私たちを幸せな気持ちにしてくれます。 出光美術館の元となった出光興産創業者・出光佐三(1885-1981)のコレクションは、この仙厓の「指月布袋画賛」から始まりました。学生時代の佐三がかわいらしさにひと目で恋に落ちたとか。 禅で「指月」の示す教えは厳しいもので、佐三もこの絵を社員たちの訓示としたと言いますが、「お月さまを取って」とばかりに手を広げる子どもは何ともキュート! この作品に始まった仙厓画のコレクションは、約1000件にのぼり、日本有数の仙厓コレクションになりました。『仙厓BEST100 ARTBOX』では、厳選した作品一点一点に、出光美術館の学芸員一同がそれぞれの思いを込めて解説をつけています。 大きな「堪忍(かんにん)」の文字と柳。そして「気にいらぬ風もあろふに柳哉」の仙厓の歌。柳はどんな風もサラリと受け流してやり過ごします。「あの柳だって出来ているのだから⋯⋯」という仙厓さんからの応援メッセージです。 仙厓の作品で、“最も有名、最も難解”とされる「〇△▢」。組み合わされた三つの図形が意味するのは、「三教一致」? 「宇宙」? 解釈に定説のない、謎の多いこの作品に、展覧会でじっくりと向き合ってみませんか。