スケボー・開心那 2大会連続銀 飛躍を支えた仲間と施設 “合言葉”は「骨は折っても心は折るな」
「パリ五輪・スケートボード女子パーク・決勝」(6日、コンコルド広場) 世界女王の15歳、開心那(WHYDAH GROUP)が92・63点で2大会連続の銀メダルを獲得した。初出場で16歳の草木ひなの(スターツ)は69・76点で8位だった。四十住さくら(第一生命保険)は予選で79・70点の10位となって落選し、2連覇を逃した。ともに母が日本人で14歳のアリサ・トルー(オーストラリア)が93・18点で初出場優勝し、16歳のスカイ・ブラウン(英国)は92・31点で東京五輪に続く銅メダルを獲得した。 【写真】開と一緒に滑っていた堤裕介さんと高木啓吾さん 札幌市内にあるスケートボードパーク「ホットボウル」で、開が幼少期の頃から一緒に滑っていたのが高木啓吾さんと、堤裕介さん。2人が取材に応じ、開の飛躍を支えた「施設」と「受け継がれた精神」について明らかにした。 開の飛躍を支えた仲間と施設がある。今年2月に札幌市内にオープンした「エアリアル・バン・K」だ。 縦10メートル、横8メートル、高さ2メートルのハーフパイプ型のセクションが設置された屋内練習場で、最大の特徴は着地点に柔らかいマットが敷いてあること。コンクリートパークで滑ることが多いスケートボードは常に大けがの危険がつきまとうものの、マットがあることでけがのリスクを減らし、空中技や、レールに板の金具部分をかけるグラインド系の技に心置きなく挑戦できる。開が東京五輪で銀メダルを獲得した後、開を含めた次世代がもっと世界で活躍できるようにと願いを込め、多額の借金をしてまで堤さんらが開業を計画した。 元々は飲食店だったため、壁を壊す内装の解体から開始。箱の大きさを最大限生かせる施設の形を考え、アクションスポーツの祭典と称されるXゲームなどの会場設置を担当する業者に依頼し、約半年でオープンにこぎつけた。 開はこの施設で空中技を含め、得意技のノーズグラインド(前輪の車軸部分を壁のふちにかける大技)を主に練習。けがの不安がないことで、腕の位置、体の向き、板の角度など細かい部分まで追求することができた。圧倒的な完成度を誇る唯一無二の技は、今回のパリ五輪でも高評価。銀メダル獲得のためのキーポイントになった。 堤さん、高木さんは、開が本格的にスケートボードを始めた小学1年生から「ホットボウル」というパークで一緒に滑っていた仲間。そのグループ内で共有していた精神は「骨は折っても心は折るな。転ぶことは挑戦で、失敗じゃない」というもの。開も最初は周りの子と変わらない普通の女の子だったが、その精神を色濃く受け継ぎ、転んでも転んでもトリック(技)に挑戦。高木さんが「360日ぐらいパークにいた」と笑うほどの練習量で、実力はどんどん上がっていった。 決勝当日は「エアリアル・バン・K」でパブリックビューイングを行い、約50人が集まってエールを送った。堤さんは「心那は世界ランク1位でプレッシャーがすごくて、一度だけ僕の前で泣いたことがあるけど『ホットボウルのために頑張る』と言ってくれた。本当にいい子」と感極まり、高木さんも「すごいですよね。心那しかないやっていない技も成功していて渋かった」と笑顔で快挙を喜んだ。 15歳ながら2大会連続の銀メダリストとなった開。表彰台では北海道にいる仲間に届けるように、最高の笑顔を振りまいていた。