「和牛王国」鳥取の復活を!子牛価格はピークの半値に下落…カギは優秀な種雄牛!新たな「期待の牛」出現
山陰中央テレビ
かつて「和牛王国」と呼ばれた鳥取県ですが、近年はその栄華にかげりが生じています。全国で人気を誇った鳥取和牛の子牛の価格が下落し、かつての半額近くまでに落ち込んでしまっています。一方で和牛王国の復活に向け、鳥取和牛期待の星も現れています。 生産者: これまでの3倍から4倍の値がつく。神様みたいなもんだね。 生産者に「神様」と言わしめ、鳥取和牛の人気を押し上げたのが「白鵬85-3」、種雄牛と呼ばれるいわゆる種付けの牛です。2017年にあった「和牛のオリンピック」・「全国和牛能力共進会」では肉質日本一に輝き、さらにその子牛の平均価格は2年連続で日本一になるなど、和牛の子牛市場を席巻しました。 しかし、いま当時の勢いにかげりが見え始めています。8月29日にあった和牛の子牛の競り。鳥取和牛の子牛の平均価格は48万円で、ピークの半分にまで落ち込みました。JAによると、鳥取和牛の子牛の平均価格は、2022年5月から下がり始め、2023年12月には全国平均を下回り、2024年7月に46万2千円と、11年ぶりに50万円を切りました。 生産者・木嶋泰洋さん: 40万円ぐらいと思っていたのでビックりです。そういう牛はおらんかったですね。前は60万円なんてついたら、肩を落として帰っていたですね。 今回のセリで高値がついたものの、複雑な心境を語るのは、生産者の木嶋泰洋さん。木嶋さんは大山のふもと伯耆町で30年以上前から和牛を飼育しています。 生産者・木嶋泰洋さん: バブルだとわかってたんだけど、中にいるときにはもうちょっと続くだろうとか、なんぼ安くなっても80万とか70万とか。 Qここまでになると想像は? 生産者・木嶋泰洋さん: みんな想像もしてないと思う。 子牛一頭を競りに出すまでにかかる経費は60万円。セリでの平均価格がこれを下回っていて、赤字となる生産農家もいるといいます。なぜここまで鳥取和牛の人気が落ち込んでいるのか? 鳥取県畜産振興課・福田孝彦課長: 「白鵬85-3」の能力自体はそれほど落ちてはないんです。それを上回る種雄牛が全国にできつつある。 一世を風靡した「白鵬85-3」ですが、近年は群馬県が産地の「福勝鶴」や「福乃鶴」といった新たな種雄牛の台頭により人気が下落しているといいます。その一番の理由は身体の大きさにあります。 生産者・木嶋泰洋さん: これがきのう生まれた(鳥取和牛の)子牛で、おととい生まれたこっちのほうが大きい。この親は今人気の「福勝鶴」。肉質が良くて大きい。 物価高騰により、牛肉の消費量が減少傾向にあり、仲卸業者などの買い手が求めるのは、「良質の肉が多く取れる身体が大きい和牛」です。前回、鳥取であった競りの平均データでは、「白鵬85-3」の子牛は、生まれて295日で体重が291キロだったのに対し、全国的に人気の「福之鶴」の子牛は、生まれて291日で309キロと10キロ以上の差があり、価格差も10万円以上でした。 県は、競りの価格が全国平均を下回った場合、差額を補填するなど対策をとっていますが、和牛王国の復活に向けて生産者が待ち望むのは、全国で通用する新たな種雄牛の誕生です。 生産者・木嶋泰洋さん: 全共で「白鵬85-3」もバッと花咲いたので、そこに新しい牛として、全共の候補牛になっている「智頭白鵬」、白鵬の子ですけど、それにみんな期待している。 こちらが「白鵬85-3」に次いで期待される種雄牛「智頭白鵬」です。 畜産試験場育種改良研究室・野儀卓哉室長 試験の成績が「白鵬85-3」より良くて、期待する種雄牛です。 鳥取和牛の復権に向けた期待の星が「白鵬85-3」を父に持つ「智頭白鵬」です。 「白鵬85-3」よりも肉質を評価するうえで重要なロース芯の面積や、霜降りの状態の数値も高く、一頭からとれる肉の割合も、鳥取県で歴代最高の成績を収めるなど、次世代の種雄牛として期待されています。 生産者・木嶋泰洋さん: 「智頭白鵬」の力を素直に評価されるということになれば良いなと思っている。食べて評価の高いものを作るという思いは、鳥取県は間違っていないと思うので。 「智頭白鵬」の子どもは、2025年度から本格的に市場に出回る予定です。かつての栄光を再び取り戻せるのか、和牛王国復活は、「智頭白鵬」の双肩にかかっています。
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