織田裕二“司馬”が「お大事に」…医師同士で大病を宣告することの難しさ<振り返れば奴がいる>
「餅は餅屋に任せる」という言葉の通り、その道の専門家には敵わないということはよくある。しかし、逆に「弘法にも筆の誤り」だったり「医者の不養生」といった言葉は、プロだからこそ見落としてしまったり、重大事項を軽く見てしまう傾向もあるという意味だ。 【写真】「IQ246~華麗なる事件簿~」で織田裕二が石黒賢と再共演 医師も人間であり、病気や怪我にもなるしいつか命が終わるときが来る。その運命を描いた名作が織田裕二と石黒賢主演のドラマ「振り返れば奴がいる」(フジテレビ系)の中盤から後半にかけての物語だ。ライバル同士である若き医師たちが、病気の発覚で揺れる第7・8話を紹介する。(以下、ネタバレが含まれます) ■石川にガンが見つかり医師たちが告知を悩む 31年前になる1993年に放送された「振り返れば奴がいる」は、大病院に赴任してきた熱血漢の青年医師・石川(石黒賢)と、若くして天才的なメスさばきを誇る司馬(織田裕二)が、医師としての信念を巡って激しく衝突していく様が描かれる。公開中の映画「スオミの話をしよう」で監督・脚本を務める三谷幸喜が初めて脚本を担当した連続ドラマ作品としても有名だ。 現在FODでは「#ドラ活 浸れ、超自分的ドラマ生活。」キャンペーンを開催中で、少し昔の様々なヒット作を見ることができる。今作も10月5日(土)まで第1~3話が無料公開中だ。 第7話は、石川(石黒賢)に悪性の胃ガンが見つかり衝撃が走る回。中川(鹿賀丈史)は、この事を石川に話さないようにと、司馬(織田裕二)、沢子(千堂あきほ)、春美(松下由樹)らに頼んだ。平賀(西村雅彦)が別の患者の胃かいようのレントゲン写真を見つけ、石川本人には「胃かいようだ」と告げて、再検査をすすめる。石川は自覚症状などから自分はガンだと考えるが「思い込みです」と春美は必死に否定。医師たちは「やっぱり告知した方がいいか」とそれぞれ思い悩む。 ■一見、冷酷な司馬の本音とは 続く第8話で、石川は中川から正式にガンを宣告され、最優先で手術することが決まる。その前に、外科部総出の体外肝切除という大手術が行われ、石川もこれに参加した。そのころ、中川は部長室で険しい表情。右手が震えるのだった。その震えが原因で手術ミスをした時、司馬にそのミスをなすりつけていた過去があり、それ以来、中川は司馬に負い目があった。 ストーリーもここまで進んでくると、司馬がただ単に冷酷な男なわけではなかったことが視聴者にも分かってくる。過去から続く中川との関係や患者の命や尊厳を考えた結果、生半可な優しさを他人に与えることをしないでいるだけだろう。 最大のライバルである石川に大病が見つかったことで、司馬の医師としての信念がハッキリと分かる。告知を避けようとする他の医師とは違い、司馬は石川本人に知らせるべきだと主張し、医者なら患部が写ったレントゲン写真を見れば病気の進行具合を分かるだろうと「おまえのだ!」「お大事に」と言い残して真実を伝えた。 長時間の手術に挑む石川に「いつ血を吐くかわからない人間がオペ室にいたら皆迷惑なんだよ」と、司馬は一見ひどい発言をするが、石川の病状を思ってのこと。他人から見える言動だけがその人の本心ではなく、別のところにも確固たる意思があるのだということを伝える深みのある作品である。