円安批判する財界人3タイプ 金融業界や海外展開する企業、家計や政府に忖度する意見も 悪者論にくみしがちなマスコミ 高橋洋一・日本の解き方
【日本の解き方】 このところの円安について、財界関係者が批判し、利上げを歓迎する意見が目立つ。なぜ円安を嫌い、利上げを求める財界関係者が多いのか。 輸出を行っていない企業や家計にとっては、円安はコストの上昇でデメリットとなる一方、輸出関連企業や海外展開している企業は円安でメリットを受ける。財界では、大企業は一般的に輸出比率が高かったり海外展開比率が高かったりするところが多く、これまで円安は企業業績を後押しするので、円安批判は多くなかった。電力業界は輸出がなく円安のデメリットしかない業界だったが、燃料費調整制度のおかげでデメリットが少なくなっている。 それでも最近円安を批判する企業も出てきたが、これには3つのタイプがあるようだ。第1に、利上げが目先の収益改善になる金融業界だ。預金による調達金利がほぼゼロでも、運用金利が低いと十分な利ザヤが得られないので、とりあえず運用金利のアップが欲しい。そこで、円安を批判し利上げを狙う。 第2は、これから海外展開しようとする企業だ。中にはすでに海外展開しており円安メリットを受けているところもあるが、今後の海外投資にはコストアップとなるので当面のデメリットでしかない。積極的な海外展開をしようとする成長中の企業であり、社会的な影響力もあるので、マスコミが取り上げることも少なくない。 第3に、中小企業や家計の代弁をしたり、政府を持ち上げたりする企業だ。実際には円安のメリットを受けているのに、それを隠すこともある。本コラムの読者であれば気がついているだろうが、政府は日本最大の円安メリット享受者だが、そこに国民の目が向くと減税要求が出てくるので、マスコミが垂れ流す円安悪者論を許容している。第3のタイプの企業はこうした政府に忖度(そんたく)し迎合するという面もある。このタイプの論者は、自分ではしっかり円安メリットを享受しているのに、あたかも弱者の味方を装いながら、欺瞞(ぎまん)に満ちた意見を述べているのでたちが悪い。 マスコミは、第1のタイプの主張をしばしば取り上げる。というのは金融業界はスポンサーであることが多いからだ。第2のタイプの意見も、話題の経営者であることから、取り上げることが多い。