京都市は観光公害! 足りない財源もはや「寺社から取る」しかない? “白足袋リスク”両天秤も、そもそも拝観料が安すぎだ
観光公害と古都税
筆者(昼間たかし、ルポライター)は以前、当媒体に「京都市の止まらぬ「観光公害」 財源なければ「寺社税」復活しかないのか? 地元紙も報道の辛らつ現実とは」(2023年11月17日配信)という記事を書いた。そこでは、京都市の深刻な財政難とオーバーツーリズム(観光公害)の問題を取り上げ、かつて京都市で実施された、寺社への課税、いわゆる「古都税」の復活可能性を取り上げた。 【画像】えっ…! これが60年前の「京都駅」です(計11枚) 記事に対して、多くの読者からもオーバーツーリズム対策として古都税を「復活させるべきだ」という意見が寄せられた。そこで今回は、古都税の復活は現実的な選択肢なのかを考えてみた。 今なお、京都市では寺社への課税を求める市民の声は絶えない。2021年に行われた京都市の行財政改革案へのパブリックコメントでは、市民から 「観光客からもうけている寺社から税収を」 「寺社の税免除は不平等」 としてかつての古都税のような徴税の検討を求める意見も多数寄せられている。また2023年、市民から寄せられた意見では外国人観光客対策として 「現在の拝観料は社寺仏閣の収入として、プラス3000円ほどは、京都市の収入とするよう制度化できないか」 という具体的な提案まで出ているほどだ。地元紙『京都新聞』も2022年、「寺社に課税を市民の声 “観光収入あるのに”“不平等”」との記事タイトルで 「「観光客からもうけている寺社から税収を得られないか」「寺社の税免除はあまりに不平等」―。そんな意見が、昨年夏におこなわれた京都市の行財政改革(行革)案への意見募集で相次いだ。財政危機からの脱却を目指す行革案に対し、寄せられた意見は約9000件。うち約240件が寺社に負担を求める意見だった」(3月7日付夕刊) と報じている。
古都税の導入歴史
古都税とは、1985(昭和60)年に京都市が導入した寺社拝観料への課税だ。文化財保護の財源を目的に、拝観料に ・大人:50円 ・子ども:30円 を上乗せして徴収するというものだった(1988年廃止)。同様に、入場料などに上乗せして対策費に充てたり、観光客の無秩序な増加を抑制したりする施策は、世界的に実施されている。 例えば、イタリアのヴェネチアでは、4月から日帰り客に5ユーロ(約840円)の入島料を課している。ゆえに、京都においても同様の施策を求める声が出てくるのは当然といえる。しかし、京都市は、古都税の復活はまったく視野に入れていない。上記のパブリックコメントに対しては以下のように回答している。 「(編集部注:京都市は)宿泊税を導入しています。拝観料や宗教法人が所有する固定資産については、国の法律(地方税法)により原則、課税できません。しかし、宗教法人であっても、収益事業を行っている場合は、その利益や収益事業の対象資産に対して、課税を行っています」 と、課税そのものが国の法律に反するという立場で真っ向から否定している。かつて、古都税の際に、拝観は宗教行為であり、それに課税することは憲法違反ではないかと批判されるも押し切ったときとは、大きく立場を変えている。 市議会でも同様の考えが支配的なのか、このパブリックコメントについて議会で言及されたのは、同年の京都市会で一度あったきりだ。2024年2月に実施された京都市長選では、古都税復活を掲げる候補者も現れたが、あまり話題にならなかった。 だが、なぜ京都市は古都税の復活に“及び腰”なのか。その背景には、いくつかの事情が考えられる。まず、当時の古都税をめぐる攻防は、寺社と行政の関係を大きく損ねた。拝観料課税の是非をめぐって、再び寺社との深刻な対立に発展することを、京都市は避けたいのだろう。ちなみに、京都には昔から 「白足袋には逆らうな」 という言葉さえある。白足袋とは、 ・僧侶 ・茶人 ・学者 ・呉服関係者 ・花街関係者 など、直接的な政治力はないが、“隠れた影響力”を持っている人たちを指す。実に古都らしい。