J2長崎を支える高木監督の無欲のマネジメント
今シーズンからJ2の舞台で戦っているV・ファーレン長崎が19日の京都サンガ戦で0対1と苦杯をなめ、3月20日のカターレ富山戦から継続してきた連続無敗試合が「11」で途切れた。もっとも、就任1年目の高木琢也監督にとって、3つ目の黒星を喫することは常に織り込み済みだった。だからこそ、この敗戦で快進撃が止まることはない。 長崎は4年越しの悲願を成就させてJFLから参入してきた新参チーム。JFLを制した昨シーズンの陣容から8人が抜け、12人が新たに加入しているが、その30人のメンバーの大半は他チームを戦力外になった選手ばかりだ。開幕前の下馬評で苦戦を免れないとされた長崎がハイペースで勝ち点を積み重ねてきた背景には、高木監督が就任直後からチームに施してきた「無欲のマネジメント」がある。 今年2月に長崎の強化部長に就任し、高木監督をサポートしてきた服部順一氏が明かす。 「ミーティングでは戦術的な部分よりも心理的な部分を説いていますね。我々はチャレンジャーだ、失うものは何もない、だからとにかくピッチの上で走り続けようと」 2対2で引き分けた前節の栃木SC戦。1点を追う後半ロスタイムに右CKを獲得した直後に、GK金山隼樹までが相手ペナルティーエリア内に攻撃参加してきた。ロスタイムの残りは約2分。カウンターを考えれば危険な選択だったが、高木監督は黙認した。 「去年までの自分だったら、キーパーに下がれと言っていたかもしれない。でも、選手たちが自分たちで考えて、キーパーに上がれと指示していたのでいいかなと」 186センチの長身・金山は当然ながら警戒される。失うものは何もない、というチャレンジャー精神が、相手のマークが甘くなったDF高杉亮太の同点ゴールを生んだ。結果として負けたとしても、選手たちが貫いた積極的な姿勢はチームの成長につながると確かな手応えを得ていたのだろう。 無敗記録が伸びるとともに注目度が高まり、有象無象のプレッシャーが生じる状況になっても、高木監督は決して選手たちに背伸びを強いることはなかった。服部強化部長が続ける。 「決して一方的に、高圧的に話すことはありません。選手の意見もしっかり聞きながらディスカッション形式に持っていって、ひとつの言葉を全員で共有させることで記録のプレッシャーなどを解きほぐすような手法をよく取っていた。そこで誰かがちょっとくだけたことを言って、みんながドッと笑うような状況になっても、もちろん咎めることもありません。僕のような第三者がはたから見ていると、選手たちが一瞬にして共通のイメージを持ったということが伝わってくるんです」