「家計の平均負債額が初の平均年収超え」って意味あるの?
住宅ローン世帯の年収倍率もじりじり上昇
家計調査ホームページで遡れる2002年以降の負債残高の年収倍率を描いたのが以下の図です。勤労者で持家でかつ住宅ローンを返済している世帯の負債残高の年収倍率は、2002年には1.78倍だったのが2023年には2.37倍。20年ちょっとで0.6ポイントも上昇しています。 一方、記事で扱っている2人以上世帯の負債残高の年収倍率は、2002年の0.79倍から2023年には1.02倍と0.23ポイントの上昇にとどまっています。勤労者世帯だと2002年の0.81倍に対して2023年は1.31倍とい0.5ポイントの上昇とだいぶ近づきますが、住宅ローン世帯について記事にしたかったのであれば、住宅ローン世帯に限った年収倍率のデータを使っても良かったのではないでしょうかね? なお、2人以上世帯でみて負債残高の年収倍率がじりじり上がっているのは、住宅ローン世帯の年収倍率の上昇だけでなく、2人以上世帯に占める住宅ローン世帯の比率の上昇も影響しています。2002年には2人以上世帯の18%程度だったのが2023年には24%弱まで高まっています。上昇トレンドも2018年あたりから高まっているように見受けられます。 「住宅ローン膨張ですり減る家計」という記事の認識は間違っていないと思いますし、今後、金利が上昇する局面で影響を受ける家計は増えていると政策当局も認識すべきでしょうね。
負債÷年間収入の推移
2人以上世帯に占める勤労者・持家・ローン返済世帯の割合
借入直後の年収倍率は近年上昇か?
最後に。上記の住宅ローン世帯の負債残高は、借り入れ当初の家計も、返済がだいぶ進んできた家計も含みます。そこで、家計調査年報の「貯蓄・負債編」の第14表の「[持家世帯]住宅の建築時期別貯蓄及び負債の1世帯当たり現在高(2人以上の世帯のうち勤労者世帯)」も見てみましょう。 最新の2023年年報で、建築時期が2023年の場合、負債残高は3580万円で年間収入は777万円となり年収倍率は4.6倍となります。5年前の2018年年報で建築時期が2018年の場合、負債残高は2157万円で年間収入は780万円となり年収倍率は2.8倍です。 足元で物件価格の高騰などを背景に年収倍率が上昇していることにも注視しておきたいと思います。
飯塚 信夫(神奈川大学経済学部教授)