ざわつく甲子園スタンド「大阪桐蔭ムチャ打つやろね」が裏切られた日…高校野球“番狂わせ”の新常識「なぜ超名門校は110キロ台“遅いピッチャー”が苦手?」
夏の甲子園。 足を運んだ日に智弁和歌山、センバツ優勝の健大高崎、そして大阪桐蔭が敗れるという「衝撃」を目撃してしまった。 【現地写真】「えっ、110キロ台こんなに遅いのに…」大阪桐蔭、智弁和歌山を苦しめた軟投派ピッチャー&「これは泣ける」今夏のベストシーン「大社高」の写真もすべて見る 印象的だったのは、智弁和歌山、大阪桐蔭の両校の打線が「遅い球の罠」にハマってしまっていたことだ。 智弁和歌山の対戦相手、霞ヶ浦の2年生エース市村才樹は身長188センチと大柄。ただしストレートは120キロ台、スライダーは100キロ台、カーブにいたっては90キロ前後と、甲子園出場レベルの学校の投手としては「超遅」といってよかった。 スタンドで見ていても、遅いと分かる。20年ほど前、現在はヤクルトスワローズの監督を務める高津臣吾が、マリナーズの本拠地で90キロ台のカーブを投げ、スタンドから「Ohhhh!」という驚きの声が上がったのを思い出したほどだ。
130キロ以上が“当たり前”
素人は、遅い方が打ちやすいと考える。 それは違うのだ。甲子園常連校の場合、対戦相手の投手が130キロ、140キロ台の速球派で、それを打ち抜くことを想定している。そうなると、日ごろのピッチングマシンの速度設定、練習試合の対戦相手も速球派の投手を求める。つまり、打撃の始動のタイミングが130キロ以上に対応したものになっている場合が多い。 そうした「初期設定」になっていると、軟投派の投手に出くわすと思わぬ苦戦を強いられる場合がある。対戦前、「相手は軟投派」とデータで示されていても、なかなか対応できるものではない。 この日の智弁和歌山は、打者の1巡目はフライアウトが6に対し、ゴロアウトは1つという内容だった。どちらかといえば、ボールの下を叩いてしまうことが目立った。 ところが霞ヶ浦に先制点を許し、打順が2巡目に入ると、遅い球をバットに引っかけることが目立ち始めた。 2巡目に入ってから、7回まではゴロアウトが8、フライアウトが2と凡打の山を築き始めた。しかも6回、7回ともに併殺打でイニングオーバー。市村の術中に完全にハマってしまう形となった。 それでも8回裏には霞ヶ浦の二塁手のエラーをきっかけに、途中出場の高桑京士郎、4番の花田悠月に連続ホームランが出て試合を振り出しに戻すと、甲子園は沸きに沸いた。 ようやくこの回の途中で市村をマウンドから引きずり下ろした格好になったが、強打者である4番の花田にしても、4打席目になってようやくタイミングをつかんだことになる(3打席目は併殺打に倒れていた)。 試合は延長戦に入り、後攻の智弁和歌山が有利と思われたが、延長11回、タイブレークの末に敗れた。振り返ってみると、市村の遅い球に翻弄され続け、後手に回ったのが敗因となった。
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