リオ五輪後のブラジル経済、成長は期待できるのか?
消費者の貧窮度はどうなっているのか
家計を取り巻く環境も深刻です。ブラジルの消費者は「物価上昇+失業率上昇」という厳しい状況に直面しています。不況下における物価上昇、いわゆるスタグフレーションです。消費者物価上昇率は10%を超え、失業率は7%台まで上昇しています。
失業率と物価上昇率を合計した数値をミザリー(悲惨)指数と言い、消費者の困窮度合いを測る指標としてしばしば用いられていますが、この数値は足もとで18%程度まで上昇しており、これは00年代半ば以降で最も高い状態です。ちなみに、日本のミザリー指数は3%台前半(物価上昇率0%程度、失業率3%台前半)、米国は6%台半ば(物価上昇率1%台後半、失業率5%程度)ですので、ブラジルの状況がいかに厳しいかがわかります。
ブラジル国債への投資は”投機”
そうした実体経済の不振は、金融市場の反応をみれば一目瞭然です。通貨レアルは13年以降、ほぼ一貫して下落しており、13年ぶりの安値水準まで売られています。これは米国FRBの利上げによって“強いドル”が意識されたことが一因ですが、本質的にはブラジル経済の“期待外れ”を反映したものと言えます。13-14年にかけて、大半の新興国通貨が売られましたが、経済の足腰を鍛えたいくつかの新興国は15年頃から下落が和らいでいますので、ブラジル側に“レアル売り”を促す要因があったことは明らかです。
そして投資家の不安を最も増幅しているのはブラジル国債を巡る問題です。過去数年、ブラジルの冴えない経済パフォーマンスを反映して、大手格付け機関は段階的にブラジル国債の格付けを引き下げてきましたが、最近では2月24日にムーディーズ・インベスター・サービス(以下、ムーディーズ)が投資適格から投機的格付けに引き下げたことが話題となりました。これまで大手3社(S&P、ムーディーズ、フィッチ)の格付け機関でムーディーズは唯一ブラジル国債を投資適格に据え置いてきたのですが、同社はこのたび「景気の大幅な減速でブラジルの財政が悪化」、「政治が不安定」として、投機的格付けに引き下げました。要するにブラジル国債への投資は“投機”という訳です。