リオ五輪後のブラジル経済、成長は期待できるのか?
2007年に米国でサブプライムローン問題が表面化すると、先進国経済はその後、坂を転げ落ちるように急減速しました。 一方、先進国の代わりに期待を集めたのは新興国でした。その当時流行した言葉に「デカップリング論」というものがあります。先進国が成長減速に苦しんでも、新興国は先進国の減速に付き合わされることなく成長できるという意味の言葉です。そうしたもとで「新興国の雄」として注目されたのがブラジルでした。 豊富な資源に裏打ちされた「資源国」という肩書きに加え、09年にはリオ五輪の開催も決まったので、成長ストーリーは順風満帆なように思えました。そうしたなか、ブラジルは有望な投資先に飢えた先進国マネーの受け皿となり、巨額の投資を引きつけました。日本の個人投資家も投資信託経由でブラジルに資金を投じました。 しかしながら、その後のブラジルの経済パフォーマンスは期待を大きく裏切る結果となっており、資産価格の下落も厳しいものになっています。今回はブラジル経済について現状と今後の注目点を解説したいと思います。
ブラジル経済に明るい兆しはあるのか
ブラジル経済については、実質GDPのマイナス成長、スタグフレーション(失業率上昇+物価上昇)、不安定な政治、通貨レアルの下落、国債の格下げ、といった経済の苦境を意味する言葉がズラリと並ぶ一方、好転の兆しはほとんど見当たりません。
3日発表の15年10-12月期のGDPの予想は?
まず、実質GDP成長率を確認すると、直近8四半期のうち6回が前期比でマイナス成長となっており、暦年ベースでは2年連続のマイナス成長が確実な状況です。3月3日に発表される15年10-12月期の実質GDPは前期比▲1.6%のマイナスが見込まれており、前年比では▲5.9%と大幅なマイナス成長に陥ると予想されています。 鉱工業生産は13年後半からほぼ一貫して減少しており、下げ止まりの兆しがみえていません。目下の水準は00年代半ばのブーム期より低い水準に押し戻されています。