53度目挑戦でメジャー最年長初V…43歳岩田寛、正月に56歳大先輩から激励「意識変わった。大会中も思い出した」
◆男子プロゴルフツアー メジャー初戦 BMW日本ツアー選手権森ビル杯 最終日(9日、茨城・宍戸ヒルズCC西C=7430ヤード、パー71) 21年目の岩田寛(フリー)が、大会最年長となる43歳130日で自身初の国内4大メジャーを制覇した。首位から出て5バーディー、2ボギーの68で回り、通算13アンダーで並んだ石川遼(32)=カシオ=とのプレーオフ(PO)を1ホール目で制した。昨年4月以来のツアー通算6勝目で、4大メジャーの初制覇では史上最年長となった。若手の台頭が目立つ男子ツアーで、不惑を過ぎたベテランが輝きを放った。 歓喜の瞬間は静かに拳を握って迎えた。ミスが続いた石川がパーを逃した一方で、岩田は2打目をグリーン奥に外しながらも巧みなリカバリーショットでパーセーブ。1・5メートルのパーパットを冷静に沈めると「最高ですね」と小さな声で喜びを口にした。 プロ21年目。53度目のメジャー挑戦。「ゴルフ人生で一度も勝ったことがない」というプレーオフは「思い出したくないくらい震えていた」。極度の緊張の中でウィニングパットを決めた瞬間は「うれしいというより、すごい疲れた」。喜怒哀楽をめったに出さない独特の間合いが絶妙な男は、優勝会見で口を開くや、いつもの“ヒロシ節”で「おなかすいた」とおどけた。 1打先行し単独首位で迎えた後半。3メートルを沈めてリードを広げた13番から14番に向かう途中で18番からの大歓声が耳に入った。「遼がバーディーを取ったんだ」。その後、差を1打に詰められると、16番のティーグラウンドで「負けたらどうしよう」と心がざわついた。 POの18番ティーに向かう際、観客から「大丈夫!」と声をかけられた。「ほとんどが遼の応援だと思っていた。岩田頑張れ、と言ってくれて泣きそうになった」と力に変えた。 最高峰の米ツアーで優勝争いしたこともある実力者も、4大メジャーのタイトルとは無縁だった。昨季、23歳で賞金王に輝いた中島啓太ら若手の台頭が目立つ。「きついですね。若い子とラウンドしたんですけど、気持ちよくみんな打つんです」。20代の突き上げを食らう中、正月には谷口徹(56)から「今年はメジャーで勝てよ」と連絡が来た。18年日本プロでメジャー最年長50歳で優勝した大先輩の激励に「それで意識が変わった。大会中も思い出した」。あまり感情を表に出さない男も大先輩の期待に応え、思わず表情を緩めた。 43歳のメジャー初Vは、73年ツアー制施行後の日本人で95年日本マッチプレー選手権の友利勝良(40歳313日)を抜いて最年長。今回の優勝で5年シードを獲得。以前、谷口から「何年シードを持っていても、勝負は一年一年」と言われたことを思い出し痛感した。「毎回年間2勝を目標にしている。今日の優勝はリセットして、明日からまた努力していきたい」。43歳、中年の星になる。(富張 萌黄) ◆男子のメジャー最年長V 国内の4大メジャー(日本オープン、日本プロ、BMW日本ツアー選手権森ビル杯、日本シリーズJTカップ)では18年の日本プロでの谷口徹の50歳92日。海外では21年全米プロのフィル・ミケルソン(米国)の50歳11か月7日。 岩田 寛(いわた・ひろし) ▽生まれとサイズ 1981年1月31日、宮城・仙台市生まれ。43歳。178センチ、74キロ。 ▽ゴルフ歴 シニア認定プロの父・光男さんの影響で14歳でゴルフを始め、仙台育英高から東北福祉大へと進んで2002年の日本アマでベスト32。04年にプロ転向。06年に賞金ランク62位で初シードを獲得。14年、フジサンケイクラシックでプロ初V ▽自身の性格 「変わっている。気持ち悪いと思ってる」と分析 ▽好物 仙台名物・牛タンではなく豚肉 ▽元野球少年 小3から中3までは野球部に所属。今でも野球が大好きで母校の仙台育英の結果は気にしている ▽復興に尽力 東日本大震災の被災地に貯金を寄付。今年1月の能登半島地震の被災者にも「してほしいことをしてあげたい」と復興の手伝いを志願
報知新聞社