まひろの不倫・懐妊は『源氏物語』の伏線か? 宣孝の健康状態にも警鐘…迫り来るXデー【光る君へ】
次々に仕掛けられていた『源氏物語』に至る伏線
さてそんな風に、我々現代人に「平安時代の恋愛倫理観パねえ」とため息をつかせるような展開が相次いだ27回だったけど、『源氏物語』に至る大きな伏線が次々に仕掛けられていった回でもあった。まず最初に、まひろが石山寺で道長と再会したときに、「なにか宋の言葉をしゃべって」と道長に言われ、まひろが「越前には美しい紙があり、あの紙に歌や物語を書いてみたい」と応えたことだ。 当時越前和紙は非常に高価で、長編の物語を書き記そうとしたら、それだけで莫大な出費となる。紫式部が『源氏物語』を連載しつづけることができたのは、彼女自身の才能や情熱もあるが、なによりも藤原道長がスポンサーとなって、紙を送っていたのが大きいのだ。 清少納言(ファーストサマーウイカ)の『枕草子』執筆もまた、主人の藤原定子(高畑充希)から紙をたまわったのがきっかけだったように、本当に紙は大事。ここでまひろが何気なく話したことが、道長のスポンサー就任フラグになるとは、なんとも周到だ。 そしてまひろが道長の、道ならぬ子を宿すのは、間違いなく『源氏物語』の光源氏と藤壺のエピソードにつながるはず。これは『源氏物語』を一回でも読んだことがある人なら、すぐピンと来ただろう。しかしそこで藤原宣孝が、光源氏の父・桐壷帝や、光源氏自身のように、自分の妻が不実の子を産んでも、そのまま素知らぬふりをして育てていく役割を負うことになるとは、思ってもいなかった。 紫式部と藤原宣孝の関係は、さほど仲睦まじいものではなかったという説が、わりと有力視されている。しかし『光る君へ』の宣孝は、もしこの推測が正しいのであれば、『源氏物語』にその面影を記されることになる。まひろにとって本当に大切な存在となった宣孝だが、幸せの光が強ければ強いほど、叩き落とす闇も深いのが脚本・大石静の得意技なわけで・・・そのXデーが非常に恐ろしくもあり、楽しみでもある。 ◇ 『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。7月21日放送の第28回『一帝二后』では、道長との子どもを産んだまひろの子育てと、道長が長女・彰子(見上愛)を中宮にして「一帝二后」体制を実現しようとする姿が描かれる。 文/吉永美和子