完封一番乗り 市和歌山・小園が選んだ料理法 選抜高校野球
第93回選抜高校野球大会は第4日の23日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で1回戦が行われ、第1試合で2年ぶり出場の市和歌山が県岐阜商に1―0で九回サヨナラ勝ちした。 【今大会屈指の好投手・小園の力投】 鋭いキレ味と分かれば、すぐさま決め球に採用した。今大会注目の右腕・市和歌山の小園は最速152キロの直球だけではなく、豊富な変化球が大きな強みだ。「唐揚げが得意」という料理上手の器用な手先で2種類のツーシームにカットボール、チェンジアップを操る中、この日のメインディッシュに選んだのはスライダーだった。 三回1死二、三塁のピンチが象徴的だった。内野ゴロでも失点の危険があるだけに、「三振がベスト」と投球に力を込めた。粘る2番・宇佐美に真ん中から外のボール球へと逃げていくスライダーを振らせて三振を奪うと、続く山本も見逃し三振に仕留めた。 甲子園練習もなく、ぶっつけ本番の大舞台。マウンドでの視界や感覚が分からず一回、先頭打者にいきなり四球を与えるなど持ち前の制球力が定まらないほど緊張していた。さらに、県岐阜商を率いるのは2016年春から秀岳館(熊本)を3季連続甲子園4強に導いた鍛治舎監督。打たせて取るのに有効な小さく変化するカットボールやツーシームを狙われていると感じ取ると、相手の頭になかったスライダーに切り替えた。 この日の最速は147キロ。物足りないばかりか6四球と乱れ、3者凡退はたった一度と再三得点圏に走者を背負った。それでも、被安打4に抑えて今大会完封一番乗りし「想像以上に1点を争うゲームで勝ち切れたのは自信になる」。大会での目標に「無失点」を掲げる小園だが、「得点は1点で十分」と言わんばかりの投球だった。【藤田健志】