「12歳ではじめてのオーバードーズ」「家庭用洗剤を飲んで自殺未遂」…仕事のプレッシャーから酒と薬におぼれた25歳女性が、精神科病棟に隔離されるまで
ICUから精神科病棟へ転院
ところが、ICUに入院してから1週間後、事態は思わぬ方向へと動いていく。 「ICUから退院する際、担当医から『提携先の内科に強いところへ転院しましょう』と言われたんです。それで転院する運びとなったのですが、なぜか精神科病棟に隔離されました。それまで精神科のことはまったく知らされておらず、新しい病院に着いて、『あれここ精神科だよな……』ってそのまま」 こうして、なかば強引に、麗さんは精神科病棟へ転院となった。 精神科には、本人の意思とは関係なく、家族の同意や精神保健指定医の診断があれば強制入院させられる「医療保護入院」や、自傷や他害のおそれがある場合は指定医と都道府県知事が入院を決める「措置入院」といった制度があるものの、麗さんはいまだに自分がどのような制度で入院させられたのか聞かされていないという。 精神科病棟内の生活は、制約が多岐にわたる。麗さんが隔離されたのは、女性患者限定の棟の4人部屋で、ベッドと簡易式のトイレしかない独房のような部屋だった。 さらに、持ち込める私物は制限が厳しかった。首を吊らせないように、靴紐やパーカーなど50cm以上の紐の持ち込みは禁止で、電子機器は基本的に通信機能のないものしか持ち込めず、外部との連絡手段は遮断されていた。化粧品はアルコールが含有されているものが禁止され、コロナ禍であっても、アルコール消毒液はその都度許可をもらわないと使用できなかった。さらに入院当初は、17時以降の外出は禁止されていた。 精神病棟の実態は秘匿性が高いため、あまり知られていない側面も大きいが、実際はどのような入院生活を送っていたのか。また、そこからどのように社会復帰したのか。後編で詳報する。 取材・文/佐藤隼秀 写真/本人提供
佐藤隼秀
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