名実ともに主人公は住民 日本とはまったく違うアメリカの地方政治
どこの自治体にも属さない地域も
まず、州のすぐ下にあるのが郡。州内の区域すべてがいずれかの郡に属しています(ただし郡自体が存在しない州もあり)。郡は独立した地方政府であり、同時に州の出先機関でもあります。公選の郡委員会が通常政策を定め、行政も行いますが、主な役割は出生・死亡などの記録管理や選挙管理、地域の道路整備と維持、建設規制および法の執行などです。 その郡の下にあるのがタウンと市町村などの自治体。タウンは主に「非法人化区域」の行政サービスを担います。「非法人化区域」とはいずれの市町村にも属していない地域のことを指し、米総人口の37.3%(2013年)が自治体のない暮らしをしています。すべての地域がもれなく自治体に属している日本と、この点でも大きく異なります。 自治体の様々な法規制を一切受けないという自由な面がある一方、たとえば広い区域を管轄する郡警察(保安官)に治安を頼ることになり、安全面などで不安定になることもあります。非法人化区域は貧困地域や遠隔地と重なる場合も多いです。
市町村は住民が作る
そこで、「市町村」になるという「選択」が出てきます。米国ではなんと、自治体は住民が作るのです。州によってそれぞれ細かい手続きは異なりますが、最終的には住民投票で過半数を得られれば、晴れて自治体が結成されます。自治体は独自の統治権限や課税権限を有し、治安維持(警察署)やインフラの整備、排水・ゴミ処理、消防・救助活動(消防署)、公共交通機関、社会福祉事業、水・電力・ガス・電気通信といった公共事業など、基本的サービスを担います。 これに加えて学校区と、地方政府からは独立して運営される特別区があります。特別区は特定の地域に設置され、防火や水道、交通運輸、水資源と天然資源の保全、空港や墓地管理などの目的別に、その多くが大きな規制権限および課税権限を有しつつ運営されています。 ちなみに日本では、昭和28年に始まった「昭和の大合併」以来、「町村はおおむね、8000人以上の住民を有するのを標準」としています。この8000人とは中学校1校を効率的に設置管理していくために必要と考えられた人口だそうです。国内法等によりそのあり方が管理される日本の自治体は、住民の発意で設立される米国のそれと対極にあるといえます。