「津軽選挙」で市議会混乱 ニッポンの金権選挙事情
他の地域でも議員の「大量逮捕」事例
1987年には新潟県巻町で定数26のうち14人が選挙違反で逮捕された例があります。1995年月には静岡県大東町では定数16中、なんと13人が逮捕。「セーフ」は3人でした。2001年には秋田県平鹿町で定数22に対し11人が摘発され、2003年には熊本県五和町で定数16のうち9人が逮捕や書類送検されています。 名古屋という大都市圏に近い愛知県西尾市でも同様の事態ありました。1991年です。定数30のうち正副議長を含む16人が逮捕され、臨時議会は開催できず、小学校の改築などの議案も通らないまま。出席議員だけで「全体会議」という集まりを持ち、「誠に不名誉」という決議を出しています。 かつては千葉県が「金権政治」の象徴と言われたことがあります。地方議員ではありませんが、最たるものは1979年の衆院選挙でしょう。この選挙で当選した自民党議員は約1億円の買収資金を交付したとして起訴されましたが、実際に使った資金は約2億5000万円に上り、有権者1人に付き現金2000円入りの茶封筒を有権者にばらまいたと言われました。逮捕者は約400人に達し、手錠が足りなくなったという逸話も残っているほどです。 後の新聞報道などによると、千葉県内では1970年からの23年間で選挙違反の摘発は8500件超、検挙者数は1万1000人超。この数字だけで「金権千葉」のすさまじさ異常さが伝わってきます。
かつての参議院選挙でも
こうした例にとどまらず、かつて「全国区」制度があった参議院選挙では、2桁から3桁の「億」の資金が投入されたと言われます。また「奄美選挙」の言葉が残る鹿児島県の徳之島では、投票箱を各陣営が奪い合ったり、投票所が襲われたりして、機動隊が導入されることもありました。こうして振り返ってみると、金銭で票を買う「買収工作」は一部地域の特殊例ではない可能性も十分にありそうです。 公職選挙法は年を経るにつれ、違反者への罰則を強化してきました。警察も選挙違反の摘発を重視しており、摘発すれば内部でも高く評価されます。その一方、買収工作は密室で行われることが多く、取り調べ対象も海千山千の政治家だったり、地域のボスだったりしますから、証拠固めは非常に難しいとも言われます。摘発された側はかつても今も「ちょっと派手にやりすぎた」「運が悪かった」と思っているだけかもしれません。