太陽フレア発生 北海道や東北、能登半島でオーロラ観測、仕組みは? 鎌田浩毅
太陽が活発な状態に入り、表面で起きる巨大な異常爆発「太陽フレア」が5月8日午前10時41分(日本時間)に発生し、その後も連日観測された。太陽フレアが発生すると強力なエックス線や電気を帯びた高エネルギーの粒子(プラズマ)が宇宙空間に飛び出す。その規模は発生するエックス線の強さに応じて5段階に分けられており、1段階上がるごとに規模は10倍になる。情報通信研究機構によると、今回は最高段階の「Xクラス」が13日午前1時26分までに9回起きた。 ■磁気嵐で送電網や通信障害も また太陽フレアに伴うコロナガス(太陽大気層にある高温ガス)が地球方向に放出されると、地球周辺の磁場を激しくかき乱す「磁気嵐」が起きる。強力な磁場が地上の送電網などの電気回路に大きな負荷をかけ、1989年にカナダのケベック州で起きたような大停電に至ることもある。この時には9時間にわたり電力供給が停止し、600万人が被害を受けた。 さらに、磁気嵐により地球を周回する人工衛星の通信機能に障害が起きたり、GPS(全地球測位システム)の精度が落ちたりする。そのほか航空機や船舶の短波通信や公共放送にも影響が出る可能性がある。短期間にこれほど大規模なフレアが発生するのは、2005年9月以来18年8カ月ぶりである。過去には米国やスウェーデンで太陽フレアによるレーダー障害が報告されており、衛星が大気圏内に落下したこともある。 太陽フレアで発生した大量のプラズマが地球を覆う電離圏に到達すると、夜空が色とりどりに染まるオーロラが発生する。太陽は太陽フレアが起こらなくても「太陽風」と呼ばれるプラズマ流を宇宙空間に放出しており、地球もそれを絶えず浴びている。北極や南極の上空では部分的に太陽風が取り込まれ、安定的にオーロラが発生する。 一方、大規模な太陽フレア発生時には、極地から離れていてもオーロラが見られることがある。今回もスイス・マッターホルン上空で真っ赤に染まるオーロラが観測されたほか、5月11日夜には北海道や東北地方、能登半島などでオーロラが観測された。