「父さん母さんは生きていないよ、ゆう君が死ぬまでは」自閉症の19歳息子、安心して“残せる”社会とは #令和の親 #令和の子
親が亡くなった後の世界でどう生きるか
勇輝さんの障がいが分かったのは3歳の頃。 発育が遅いことを保育士から告げられ、医療機関で自閉症があることが分かりました。 その時に両親が思ったこと。それは『自分たちがいなくなった後、誰がこの子の面倒を見るのか』 幼い勇輝さんを前に、真っ先に思ったのは、いつか必ず訪れる別れのことでした。
息子のために何ができるのか? 父の康夫さんは障がいがある人たちが協力してお弁当を作る作業所で働いています。 仕事を通じて多くの人とつながることで、生きがいが持てる。康夫さんは、そう信じています。 【父・康夫さん】「障がい者の方たちに社会との接点をつくるのが僕らの仕事です。そこにやりがいを感じています」
しかし、いま息子の勇輝さんには社会との接点がありません。 家に引きこもり、心のよりどころは両親だけです。 両親が突然いなくなったら… いつも両親の肩をポンポンとたたいて話す勇輝さんが、誰の肩をたたいて心を開くのか。 将来両親がいなくなれば、勇輝さんは一人で生きていくことになります。
「生きていないよ、ゆう君が死ぬまでは」
家族は週末になるとマンションを離れて暮らしています。 勇輝さんの障がいが分かった、あの日をきっかけにコテージを建てました。 ここなら勇輝さんがどんなに歩き回っても、大きな声を出しても、周りの目を気にすることはありません。しかし、決してなくならない将来への不安。 両親は勇輝さんを不安にさせないように話しかけます。
【母・知子さん】「ゆう君、コテージに住みたい?一緒がいい?」 【勇輝さん】「一緒がいい」 【父・康夫さん】「父さん母さんは、じいちゃんばあちゃんになったら死ぬんだよ、生きていないよ、ゆう君が死ぬまでは」 【母・知子さん】「そのとき、ゆうちゃんが住む所がないとね」 【父・康夫さん】「大丈夫よ、大丈夫」
障がいがあるからこそ地域との繋がりを
障がいのある人が暮らせる施設は全国的にも足りないといわれています。 【父・康夫さん】「障がいがある人の暮らしの場が足りず、制度も充実していないことで家族に負担のしわ寄せがきている。重度の障がい者を受けとめる施設、グループホームが余りにも少ない。」 この現実を伝えようと、康夫さんは広島市の担当者に要望書を提出しました。 障がい者の数は、年々増加する一方、重度の障がいがある人を受け入れる施設に入所できる人は15年前と比べおよそ2万人減っています。 なぜ、施設が不足しているのか。その主な理由は、国が示したある方針です。 国は障がい者の受け入れについて「入所施設」から「グループホーム・自宅」へ移行し、障がい者が健常者と同じように地域で自立して暮らすよう政策を進めています。 グループホームは、住宅やアパートなどを活用したもので、主に障がいの軽い人が多く入所しています。