町民と交流、審査の重圧から涙…今秋映画化、写真甲子園を生んだ東川町の力
今年の1月、都内で行われたある移住・交流・地域おこしのイベントに行ってきた。およそ300もの地方自治体のブースが並び、わが町の魅力を伝えようと一生懸命PRに力を入れている。 日本全体でも人口減少に転じている中、都市部への人口流出による減少の課題を抱えている自治体が多い。観光で訪れるならまだしも移住となるとそう簡単に決断できることではないだろう。 しかし、その中でも人口減少を食い止め、増加へと転じさせている自治体がある。そんな町の一つ、北海道のほぼ中央に位置する東川町。その理由はなぜ、魅力はいったいどこにあるのだろうか。
1985年(昭和60年)の「写真の町」宣言と同時に開催している「フォトフェスタ(東川町国際写真フェスティバル)」や、全国の高校写真部、サークルの頂点を競う「写真甲子園(全国高等学校写真選手権)」など、夏には町を挙げての写真のイベントが開催されている。 フォトフェスタは北海道出身の写真家や北海道にゆかりのあるものを撮り続けている人に贈る賞を始め、国内、海外、新人の作家に毎年「写真の町東川賞」として、賞と賞金を贈呈している。「写真」を通じて生まれた交流は町民の文化意識の醸成だけでなく、写真文化への貢献と育成をも目的としている。 写真甲子園は今年で第24回を迎える。この写真甲子園では、選手が町内のホストファミリーにホームステイをしたり、大会運営の食事作りが町民の婦人団体のボランティアによることなど、全国の高校生と住民が交流を深める機会になっていった。 全国500校以上の応募の中から11のブロックに分けられ18校が本戦で戦う。1チーム選手3名、監督1名で構成され、厳格なルールのもと、ファースト、セカンド、ファイナルと3つのステージで競い、毎回8枚1組の組写真を提出する。 ステージごとに東川町と隣接する市町村がフィールドに選ばれ、テーマが決められる。カメラ、レンズ、メディア、パソコンなどは主催者が用意したものしか認められず、それぞれのチームの「心」(テーマに沿った着想力)・「技」(技術力、構成力)・「眼」(表現力、独創力)の観点で採点される。 選手の高校生にしてみれば、初めての北海道という場所、限られた撮影時間と作品提出の制限時間、公開審査会でのプレゼンテーションや審査委員からの厳しくもある批評は、今までに味わったことのないプレッシャーになっていく。 そのせいか、表彰式では多くの感動の涙が見られる。その高校写真部の日本一を決める写真甲子園に挑む生徒の姿を追った物語が映画化され、今秋11月に公開されるという。(つづく) (2017年7、8月撮影・文:倉谷清文) ※この記事はTHE PAGEの写真家・倉谷清文さんの「フォト・ジャーナル<町民の心捉えた写真の町 北海道東川町>倉谷清文第7回」の一部を抜粋しました。