議会にヤジは必要なのか?
だが、元自民党衆議院議員で弁護士の早川忠孝さんは「ヤジは禁止しては」という立場だ。「国会議員はともかく、地方議員の役割は、同僚議員をやじり倒すことではない。むしろ同僚議員とともに行政のチェック機関としての役割を果たすことだ。どこをどう引っくり返しても同僚議員の真面目な質疑に対するヤジを正当化する理屈は出てこない。少なくとも発言中の議員の発言を妨げるようなうるさいヤジは暴言となんら変わらない。議会の審議は静かな環境で行われるのが望ましい。この際、議会では不規則発言やヤジは禁止する、という文化を作り上げたらどうだろうか。ヤジは議会の華、と言った時代は昔のことだ」と主張する。 一方で、政治評論家の森田実さんは違ったスタンスだ。「演説すれば、『いいぞ』とか『おかしいぞ』とか、反応がかけ声となって出てくるの当然。それをやめよ、というのはナンセンスだと思う。うまいヤジは議会の華。不愉快にならないような一定の品格ある、ユーモア、機知の富んだヤジを飛ばして、激励したり立ち往生させたりすることは、ずっとやってきたことだ。ただ、問題なのは、ヤジが下品になって下手くそになったということではないか。政治を知らない連中が政治家になり、幅をきかせている。政治家が堕落し、人を傷つけるのが平気になった。大衆の気持ちをつかめない人が増えた」と指摘する。 外国の議会ではどうなのか。アメリカの雑誌ニューズウイークによると、2009年9月、オバマ米大統領が議会で医療保険改革法案の早期成立を訴える演説中、共和党のジョー・ウィルソン下院議員が「ウソつき」とヤジを飛ばした。これに対し、下院はウィルソン議員にけん責決議を行ったという。 ジャーナリストの池上彰さんは「米大統領は連邦議会で演説をしますが、日本の国会と違って、議員はヤジを飛ばしません。むしろ熱烈な拍手をし、最後はスタンディングオベーションです。これは国民に選ばれた代表にヤジを飛ばすと、国民を侮辱したことになるからです」(日経新聞2013年8月5日)と説明する。