南北女子アイスホッケー合同チームに韓国現場からは困惑の声
平昌五輪への北朝鮮の参加を受け入れた韓国は、実務協議を行い、開会式での合同入場、女子のアイスホッケーでの合同チームの結成、北朝鮮の金剛山(クムガンサン)での文化行事共催、馬息嶺(マシクリョン)での合同練習、北朝鮮のテコンドー演武団の受け入れなどに合意した。 だが“政治的判断”で五輪開催直前になって合同チーム化を命じられた韓国の女子アイスホッケーチームでは、困惑の声が広がっている。 英国の高級紙タイムズ紙の電子版が「韓国選手が反発。貴重な五輪舞台が政治的理由で北朝鮮選手のために失われるとの恐れを抱く」と報じたもの。 同記事は「韓国チームのカナダ人コーチは、トレーニング終盤にきて新メンバーを加えることでチームに『ダメージをもたらす』と主張している」とし、韓国女子アイスホッケーチームのサラ・マレー・ヘッドコーチの「五輪直前に、このようなことが起こり驚いている。我々の選手にダメージが及ぶと思う。選手たちは代表となり五輪に行き、試合に出る資格があるのに後になって選手を追加されるのは厳しい。明らかに我々の選手に影響を及ぼすものだ」とのコメントを紹介した。 同記事によると、五輪のアイスホッケー競技の出場登録選手枠は23人で、その中から選ばれた6人がプレー、試合中に選手交代が可能で、ベンチ入り全選手が出場することもできるという。だが、今回、韓国と北朝鮮の合同チームになるため、急遽、「北朝鮮からの12人を加えて登録ベンチ入り枠を特別に35人枠に広げるルール変更を提案している」という。 だが、「実際のところ、五輪会場のロッカールームは23選手分のスペースしかない」という現状があり、マレー・ヘッドコーチも「35選手にするのはとても難しい。ベンチに35人が入れるとは、とても思えない」と困惑している。 同記事は「韓国の平昌で開かれる冬季五輪開始まで3週間あまりしかない。新しい選手(北朝鮮)との練習時間もほとんどない。ただ統一チームの登録ベンチ入りが特別に35人枠と広がることになれば、明らかに、それはメリットとなる。そのことに他国チームの少なくとも一人は反対を表明している」とも伝えている。 戦術、戦略が重要視されるチーム競技のアイスホッケーにおいて、いきなり合同チームを命じられても現場が混乱するのは、もっともだろう。世界ランキングでは韓国が22位で、北朝鮮が25位。チーム構成は、韓国が23人、北朝鮮が12人となりそうだが、選手をどう起用するか、などで問題も出てくる。 特別に登録ベンチ入り枠が、この合同チームだけが増えるとなると、公平性に欠き、他チームから不満が出るのも当然の事態。 政治とスポーツは、切り離されるべきで、現場レベルでの事前協議もないままに無理やり合同チームを命じられた選手や現場のスタッフは悲劇でしかない。南北の融和、友好の象徴とするには無理がある。