東京五輪U-24代表“キーマン”三笘薫は久保建英と一体どんなハーモニーを前線で奏でるつもりなのか?
もっとも、逆転勝利に貢献しても、すぐに先発には名前を連ねなかった。30試合に出場したなかで、先発は11度だけにとどまった。殊勲のヒーローになった湘南戦も含めて、ほとんどが後半途中から左ウイングとしてピッチへ送り出されたなかで、鬼木達監督の意図を三笘自身も感じていた。 「途中出場だとオープンな展開になりやすいし、そういう状況だと自分の特長でもあるドリブルも仕掛けやすい。そういうなかで自信もついていった、という感じです」 昨シーズンの川崎は総得点88と歴代最多記録を更新した。試合が後半に入った時点でリードしている展開が多く、相手も前へ出て来ざるをえない。そうした展開でスピード感あふれる縦へのドリブル突破に長けた三笘を投入して、追加点を積み重ねていくパターンが鮮やかに奏功した。 そして、結果を手にするたびに自信を膨らませたルーキーは、終盤戦では代役のきかない存在感を放った。ともに1997年に生まれ、順天堂大学から加入した川崎で三笘とチームメイトになり、今回もそろってU-24代表に招集されているMF旗手怜央は言う。 「川崎が優勝した要因として、薫の存在は大きかった。近くで見ていて圧巻だったというか、一人だけ存在感が違う感じで本当にすごいと思った。その反面、もちろん悔しさもありましたけど、薫とは特長が違うし、比べるのは違うな、と。自分は自分のよさを出そうと思っています」 昨シーズンのサガン鳥栖でチーム最多の9ゴールをマーク。今シーズンも6試合で3ゴールをあげて開幕無敗の鳥栖をけん引し、脳震とうで招集を辞退したMF堂安律(ビーレフェルト)に代わって初招集されたFW林大地も、同じ1997年生まれの三笘を当然のように意識している。 「たまに『どう思いますか』と聞かれるんですけど、薫ぐらい結果も実績も昨シーズンの僕は残していないので、勝手に個人的に刺激をもらっている感じですね」 6勝1分けと無敗をキープし、今シーズンも首位に立つ川崎のなかで、ルーキーイヤーよりさらに警戒される存在になった三笘は1ゴール2アシストをマークしている。東京五輪世代から憧憬の念を送られても、背中を追われている意識は「まったくないですね」とさらなる前を見すえる。 「僕自身も同世代の選手を追っている立場なので。同世代だけでなく、ひとつ下の世代でもフル代表に呼ばれている選手がいますし、世界でも活躍している選手が多くいるなかで、ここで満足していられないな、という気持ちがすごく強い。世界を見れば自分も若くないので、もっともっと活躍しなきゃいけないという気持ちで毎日をすごしています」 フル代表に招集されたひとつ下の世代が堂安であり、今回もU-24代表ではなく、フル代表に名前を連ねるDF冨安健洋(ボローニャ)となる。そして、挑戦の舞台を日本国内から世界へ移した多くの日本人選手のなかに、今回のU-24代表に招集されているMF久保建英(ヘタフェ)がいる。