朝ドラ『虎に翼』に登場する華族令嬢・桜川涼子はどれくらいお嬢様だったのか? そもそも「華族」とはどのような人々だったのか?
NHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』第3週「女は三界に家なし?」がスタートした。そこで改めて華族令嬢・桜川涼子(演:桜井ユキ)の家柄の良さや周囲から注目を浴びていることが強調された。今回は、経済的に恵まれている女子学生らのなかでも頭一つ抜けている「華族」という身分について取り上げる。 ■明治維新後に誕生した新たな特権階級層 主人公・猪爪寅子(演:伊藤沙莉)と共に法律を学ぶ同級生は、いずれも“庶民”ではなくそれなりに裕福な家の女性たちである。なかでも桜川涼子は、華族のご令嬢であり、ファッションや言動がメディアに取り上げられる有名人だ。海外で過ごした経験があることから英語が堪能で、成績優秀という、絵に描いたような完璧なお嬢様である。 華族とは明治2年(1869)から昭和22年(1947)まで存在していた日本における貴族階級のことを言う。まず版籍奉還と並行して、従来の身分制度の公卿・諸侯の称号は廃止となって「華族」と称されるようになった。その後明治17年(1884)の華族令によって、「公爵」「侯爵」「伯爵」「子爵」「男爵」の5つの爵位が設けられ、華族内で等級分けされた。各等級に叙されたのは主に以下のような家々である。 公爵……公家の五摂家や徳川宗家 侯爵……清華家や徳川御三家、現米15万石以上の大名家、琉球国王・尚氏 伯爵……公家の大臣家、堂上家、徳川御三卿、現米5万石以上の大名家 子爵……伯爵の要件を満たさない堂上家、明治維新前の諸侯 男爵……明治維新後に華族となった家 上記はあくまで条件の一部に過ぎず、分家や出家した皇族の還俗など様々な理由によって華族になる者、爵位を振り分けられる者がいた。また、勲功によって爵位を得ていく「勲功華族」も増加した。 ちなみに、『虎に翼』の桜川涼子はこのうち男爵家の令嬢であるという。ドラマでは涼子が新入生代表として挨拶する場面で多くのメディアがつめかける様子や、寅子の家を訪ねる涼子を近所の人々が物珍しそうに眺める様子が描かれている。寅子が手にした雑誌に、ドレス姿の写真が掲載されていることもあった。当時の華族令嬢は現代で言うところの芸能人のような扱いを受けることもあり、それが如実に描写されているのだ。 さて、4月15日(月)放送回で、そんな涼子が対照的な表情をする場面があった。まず生徒数が激減した女子部法科の存続を懸けて「明律祭」で法廷劇をするとなった際、まるで客寄せパンダかのように扱われて涼子は一瞬表情を曇らせた。一方で、脚本を書きあげて寅子に見せるシーンや、それを褒められてパッと笑顔になる瞬間があった。 彼女は「華族・桜川家のご令嬢」として好奇の目に晒されることにある種の諦念を抱いている。特権階級ゆえの息苦しさの中で、自分を特別扱いしない同級生と共に何かを為すことに希望を見出しつつある彼女の今後に注目したい。 <参考> ●NHKドラマ・ガイド『虎に翼』(NHK出版) ●『「華族」の知られざる明治/大正/昭和史』(ダイアプレス)
歴史人編集部