92歳父のもとで「牢屋」に閉じ込められる…かつては月収40万円も、リーマンショックで失業。53歳現在は「手取り月10万円」で施設拒否の父を介護する、独身娘の絶望【社会学者が解説】
若者期と高齢期に挟まれた35歳から64歳のミドル期シングルが増加しています。家庭を持つきょうだいに比べ、押し付けやすいせいか、ミドル期シングルは高齢親の介護を担うケースも多くみられ……。本記事では、宮本みち子・大江守之編著、丸山洋平・松本奈何・酒井計史著「東京ミドル期シングルの衝撃」(東洋経済新報社)から一部抜粋・編集して、介護担当が「嫁」から「おひとり様」へと移行した現状を紐解いていきます。 【早見表】年金に頼らず「1人で120歳まで生きる」ための貯蓄額
介護担当は「嫁」から「おひとり様」へ
シングル女性の半数近くが親の介護を引き受けようとしているのはなぜなのでしょうか。残念ながら、私たちの調査では介護意向に関する掘り下げた設問を設けなかったため、「なぜ介護を引き受けるのか」をつかむことはできません。 しかし、親、特に母親と娘の交流頻度の高さ、いざというときに親をあてにしている信頼感や安心感をみる限り、介護が必ずしも押しつけられたものとはいえない面があります。配偶者や子どもを持たないシングル女性にとって親は愛情の対象であり、それゆえケアの対象として重要な存在となっているのです。 その一方で、「身軽である」という理由できょうだいから介護を押しつけられている例があることも否定できない現実です。シングルが増加することは、高齢者の介護担当が「嫁」からシングルの娘へ、さらにはシングルの息子へと比重が移り、介護の様相が変わっていくことが予想されるのです。 未婚者の多くがミドル期まで親との頻繁な交流を続け、やがては親の老後を引き受けようとしているのは、結婚しないがゆえに親子の縦の関係が長期にわたって続く傾向にあることを示しています。結婚による横の関係(配偶関係)と子どもの出生による縦の関係(親子関係)のどちらも持たないシングルは、初老から高齢の親との関係によって家族機能を補完していることの結果ではないでしょうか。 しかし、親の介護を引き受けることは、今の仕事を失うことにつながりかねない不安となり、経済的負担となり、郷里に帰らなければならないかもしれないこととセットです。悩みを抱えるシングル女性は少なくありません。 ・広島の母親が心配なので、年に最低2回、多ければ3回くらい帰っています。今のマンションは病院に近いので、母がひとりで住むのが心配になってきたら、母にこのマンションに住んでもらって、私はパートナーと一緒に住んでもいいかなと思っています。(45歳女性) ・両親に何かあったとき、面倒を誰がみるかは、不透明というか難しいところです。本当は、私が実家に戻って結婚してほしかったみたいです。(37歳女性)