昨年8月宝塚退団の女優が初ミュージカルで熱演中、パワハラ問題で揺れた古巣後輩への心情も
昨年8月に宝塚歌劇団を退団した有沙瞳が、初のミュージカル「CROSS ROAD」の熱演で存在感を放っている。12日に東京公演を終え、17日には大阪公演が幕を開ける。11年5カ月在籍した宝塚との演技の違いに戸惑いつつも、確かな成長を実感している。【松本久】 【写真】昨年8月宝塚退団の女優「アンパンマンみたいですよね」 ◇ ◇ ◇ 「CROSS ROAD」は19世紀の欧州を舞台に、音楽をつかさどる悪魔と音楽家や周囲の人たちが織りなす物語。有沙は音楽を自由に愛する女性をダブルキャストで演じている。 「宝塚ってお化粧や衣装が派手な分、それに負けないようにオーバーに演じるところがあるんです。でも、今は素の化粧にまつげをちょっと濃くしたかな~くらいで舞台に立っているので『こんな普通の私のままで大丈夫ですか…』っていう感じ。それが初めは不安でした。衣装や化粧、目線の送る先や発声も宝塚とは全然違う。毎日がすごく勉強になっています」。 11年以上も体に染み込んだスタイルとの違いに戸惑いながらも、新たなチャレンジに成長も実感している。 「ダブルキャストって宝塚にはないからそれもすごく新鮮です。客観的に自分の役を見ることができるので、自分だったらどうするかを考えたりできるから勉強にもなる。すごく感謝をしています」。 東京公演は4月22日に始まり5月12日まで。これから大阪公演(今月17~19日)と福岡公演(同24~26日)が待っている。三重県鈴鹿市生まれの有沙は「関西でやるのは故郷に帰るような思いですごくうれしい。家族や身内が総出でいっぱい見に来てくれます」と楽しみにしている。 小さいころは祖母の影響で演歌を歌っていた。 「おばあちゃんは歌が大好き。引っ込み思案だった私を心配して、カラオケ喫茶などに連れて行ってくれました。そこで歌うと、おじいちゃんやおばあちゃんが喜んでくれるのが私もうれしくて。あの時、歌って楽しいなと思ったのが今につながっています」。 小中校時代には民謡を習い、全国大会にも出場。演歌の東海地区大会で優勝したこともある。 「小さい頃、家族でスーパーに行って私がいなくなっちゃうと、音楽の鳴るラジカセの前に座っていたらしくて。もしかしたら、母のおなかにいるときからずっとおばあちゃんの歌を聞いて育ったから、生まれつき音楽に引き寄せられているのかもしれません」。 音楽の申し子のような有沙。その活力源は笑顔と愛だという。 「アンパンマンみたいですよね(笑い)。ファンの人から『笑顔を見ると元気をもらえる』『いやされる』と言っていただけることが多くて、それがすごくうれしい。宝塚って愛の作品がすごく多いので、これからも愛の素晴らしさをお届けしていきたいと思っています」。 宝塚を巡っては、パワハラ問題が大きな社会問題になった。これには「宝塚も変わっていった方が良いところも絶対にあると思う」としつつも「青春の全てをかけて輝いている(団員の)姿を見ていただけたらうれしい」と後輩たちをおもんぱかる複雑な心情をのぞかせた。 7月には「夢だった」という初のディナーショーを15日に東京、20日に兵庫県宝塚市で開催する。 「宝塚を卒業して1年になる記念です。宝塚時代の曲はもちろんですが新しい曲も歌います。いろんなジャンルの曲をお届けしますけど、歌うのは自分の好きな曲だけ。すっごく楽しみです」。 最後にファンにメッセージを求めると「これからもいろんなことに挑戦し、宝塚時代では見られなかった新しい『有沙瞳』をお見せしたい。楽しみにしていてください」。 宝塚を離れて約9カ月。“笑顔と愛を伝える”モットーは変わらず、有沙は新たな道を真っすぐに歩んでいる。 ◆有沙瞳(ありさ・ひとみ) 三重県鈴鹿市出身。12年に宝塚歌劇団に入団し、23年8月に退団。同10月に長良プロダクションに所属した。芸事は三味線、バレエ、モダンダンス、日本舞踊。趣味は神社めぐり。161センチ、血液型O。