NFT市場2024年以降の行方、95%が価値を失うもテクノロジーの有用性に対する期待高まる
NFTの終焉?2024年以降の活用可能性を説く専門家も
NFT市場はバブル崩壊後、特に目立った回復を見せてはおらず「NFT終焉論」が囁かれている。しかし上記の専門家らは、NFTテクノロジーの有用性は高く、別の形で広く活用される可能性を説く。 ラマムルティ教授は、不動産など物理的有限性を持ち、永続的な価値を持つ資産の所有権のデジタル化で活用される可能性があると指摘する。NFTはブロックチェーン技術を活用したデジタル所有権を表すトークン。不動産のような有限で永続的な価値を持つ資産にNFTを適用することで、所有権の明確化、取引の透明性の向上、そして効率的な資産管理が可能になることが期待される。 一方ラウィッツ氏は、NFTの次の進化として実際の利点を消費者に示すことが必要だと指摘する。たとえば、著名アーティストのNFTを購入することで、次のコンサートツアーの特別チケットを得られるような仕組みだ。また同氏は、IP(知的財産)分野でも機会があると言及しており、Pudgy PenguinsのようなNFTキャラクターがウォルマートでぬいぐるみとして販売された例を挙げている。 NFTに対する主要メディアや一般消費者の関心は薄れたものの、アーティストによる実験的な取り組みは増えており、今後は単なる短期的な利益追求の手段としてではなく、実用的かつ創造的な用途に進化する可能性が高まっている。
今後注目されるNFT/ウェブ3とAIの連携
2024年以降、NFT/ウェブ3領域ではAI活用が増える可能性を示唆する動きも散見される。 2023年11月、シードラウンドでの2500万ドル調達とともに、ステルスモードから公開モードにシフトした分散型AIプラットフォーム「Ritual」がその一例だ。 Ritualは、Web3投資家のニラジュ・パント氏とデータ分析会社Palantirでクオンツとして活躍していたアキレシュ・ポッティ氏が立ち上げたスタートアップ。パント氏は、この1年のAIトレンドに関して、新たな経験やプロダクトの提供によりAI企業が著しい成長を遂げたが、同時に重大な問題も起こっていると指摘する。それは、主要なAIモデルのほとんどが少数の企業がホストする中央集権的なAPIで運用されているという問題だ。パント氏は、透明性が欠如しているほか、十分なデータの整合性やプライバシーが提供されていないと述べている。Ritualは分散型AIプラットフォームの提供を通じてこの問題に対応する構えだ。 同プラットフォームは2024年初頭にリリースされる見込みで、以下のような機能を持つ。 プラットフォーム機能の1つ「Infernet」は、AIモデルとスマートコントラクトを結びつけるもので、Ritualプラットフォームの中核を担うシステムだ。 開発者は、オープンソースや自身で開発したAIモデルをこのInfernetにデプロイすることができる。Infernet上では、このAIモデルに対して、スマートコントラクトによる計算処理やデータ処理の依頼が実施され、AIモデルがこの依頼されたタスクを処理し、その結果(推論の出力)をスマートコントラクトに戻すというプロセスが実行される。 つまり、タスク依頼の情報とそれに対するAIモデルによる推論結果がブロックチェーン上に記録されることになり、やり取りの履歴が誰でも検証できるようになるのだ。これにより、透明性を高めるとともに、AIモデルの使用に関するデータの改ざんや誤用を防ぐことが可能となる。 スマートコントラクトを使用しない場合、これらのプロセスは通常、中央集権的なシステムやサーバーで管理されることになり、同じ水準の透明性や検証可能性を得ることは難しくなる。このほかRitualでは、開発者がAIモデルを収益化できるマーケットプレイスも登場する予定だ。 OpenAIのCEO追放騒動を受け、AIモデルやAPIの多様化を求める声が強くなっていることも事実。NFTが実用的かつ創造的な用途としてどのような進化を遂げるのか、またNFT/ウェブ3とAIの連携はどのような形で展開していくかが2024年の注目点となるだろう。
文:細谷元(Livit)