台湾の民意は「民主政治の維持」:頼次期総統は蔡英文路線を継承―謝長廷・駐日代表に聞く
民主化発展の歴史に理解を
川島 日本が台湾への理解を深めるために必要なことは? 謝 日本には台湾の民主化発展について知ってほしい。世界的に見ても非常に優秀な例だと思う。私たちは武力を用いず、平和的に民主化した。その後は(民主的な価値観が)社会にすぐ浸透した。1月の総統選が好例だ。負けた陣営も勝った陣営も、互いにたたえ合って結果を受け入れた。中国による強い圧力の中で、通常通り投開票が行われたことも特筆すべきだ。 川島 大変重要な指摘だ。残念なことに、日本の議員が台湾を訪れると、多くの場合、安保関連の話し合いだけで、人権博物館や二二八国家記念館などの施設を訪問することはあまり見られない。先に訪台した米国のペロシ元下院議長は訪問の際、民主化に深く関係する台湾人権博物館を訪れている。 謝 この方面での台湾理解を深めてほしいと思う。さらに台湾の民主化において、1970年代から80年代には日本人からの支援があったことも知るべきだ。 インタビューは台湾東部沖地震発生前の2024年2月29日、東京で行った。 まとめ:鄭仲嵐(nippon.com海外発信部)
【Profile】
謝 長廷 台北駐日経済文化代表処代表。1946年、台北生まれ。国立台湾大学卒業、京都大学大学院法学研究科博士課程修了。弁護士から政界に転身し、86年の民主進歩党結成に参画。立法委員(国会委員)、高雄市長、同党主席などを歴任し、陳水扁政権の2005年から06年に行政院長(首相)を務めた。16年6月から現職。 川島 真 nippon.com編集企画委員。東京大学総合文化研究科教授。中曽根平和研究所研究本部長。専門はアジア政治外交史、中国外交史。1968年東京都生まれ。92年東京外国語大学中国語学科卒業。97年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学後、博士(文学)。北海道大学法学部助教授を経て現職。著書に『中国近代外交の形成』(名古屋大学出版会/2004年)、『近代国家への模索 1894-1925』(岩波新書 シリーズ中国近現代史2/2010年)など。