【独自】西日本豪雨対応巡り倉敷市を提訴 精神疾患発症の市職員 賠償求める
2018年7月の西日本豪雨で、岡山県倉敷市の災害対応体制が不適切なため過重労働で精神疾患を発症し、その後も十分な配慮がなく症状が悪化したとして、市職員の男性(52)が、市に約396万円の損害賠償を求めて岡山地裁に提訴したことが9日分かった。公務災害の認定を求める行政訴訟も起こした。男性の代理人が取材に明らかにした。 男性は豪雨発生時、市の防災危機管理室で勤務し、緊急速報メールや防災無線といった災害情報の発信業務などを担当していた。巨大災害の対応を巡る自治体職員の負担の重さとケアの在り方が焦点となる。提訴はいずれも9月2日付。 訴状によると、当時は交代要員がおらず、1人で全ての作業を強いられた上、被災者やメディア、支援団体などの対応も中心的にこなした。月約200時間に及ぶ長時間残業が続き、2カ月後には不眠や動悸(どうき)、うつ症状が現れたが、通院する余裕もなく、19年4月の異動まで業務に追われたという。 21年4月、災害対応が必要な建設部門に配置され、ストレスで症状が悪化。同10月、適応障害などの診断を受けたが、他部署への異動希望がかなわず22年4月~23年2月、療養と休職を余儀なくされた。市に対し「災害対応体制が不十分で過度な負担を強いた上、適切な人事異動を行わなかった安全配慮義務違反がある」と主張している。 23年5月には公務災害認定を申請したが、地方公務員災害補償基金に傷病は公務とは関係ないと却下された。男性側は「症状の悪化は豪雨時から続く一連の疾患だ」と訴えている。 男性は取材に対し「今も災害時は体調が悪くなる。市には不適切な対応だったと認めてほしい」とし、公務災害については「十分な聞き取りもなかった。判断を見直してもらいたい」と話す。 市は「現時点では答えられない」、同基金は「係争中の事案についてコメントは差し控える」としている。