“生身の姿”で活動するVTuberやVR発団体とJAXAの共同案件……広がりを見せるバーチャルシーン
■新年度とともに、新規展開が始まるVTuber業界 新年度が始まり、各所で新規展開の足音が聴こえ始めた。話題性が特に大きそうなのが、Activ8が発表したVTuberグループ「SHOWCASE」だろうか。キズナアイを生み出した会社が2024年に仕掛けるのは、「生身の姿でも活動する」こと。「生きる世界の選択肢を増やす」というミッションのもと、業界のパイオニアがVTuberの可能性を広げる動きに乗り出したと言えるだろう。メンバー発表は4月19日、初配信は4月27日だ。 【画像】生身の姿で活動、異世界モノなど幅広いグループがデビュー 4月15日のバーチャルニュースたち 拡大の続くBrave groupからは、新たなVTuberプロジェクト「ゆにれいど!」が発表された。「異世界」をコンセプトに据え、先日始動した「YUMENOS」のように、配信だけでなくアニメーションや漫画といった多角的な展開も予定しているようだ。メンバーは男女半々の6名。この中には、同社グループ「HareVare」から移籍してきた群青ロマンや、もともと個人VTuberとして活動していた花ノ木まるなど、変わった出自のメンバーも見られる。デビューは4月19日より順次実施予定だ。 「ホロライブプロダクション」からは公式トレーディングカード『hololive OFFICIAL CARD GAME』が始動した。カバー株式会社が自社で企画・開発を行った新規TCGとなり、新旧様々なイラストが描かれるカードはコレクション用にも、ゲームにも活用できるようだ。同社の動きを見ていると、VTuber業界の中でも特にIPとしての展開に注力しつづけている印象だ。 また、『ホロライブ』所属のロボ子さんがチャンネル登録者数100万人を達成したという報もあった。ときのそらと並び、『ホロライブ』では最古参に位置するタレントであり、デビューからは実に6年越しの達成だ。長く続けることの意義を、彼女もまた証明していると言えるだろう。 「KAMITSUBAKI STUDIO」のバーチャルシンガー・CIELは、昨年10月以来の『VRChat』でのライブイベントに乗り出した。1stワンマン『空想劇-神椿市伍番街-』は、5月18日に開催。完全無料ライブだった前回とは対照的に、今回は『VRChat』現地はチケッティングが必要となる。“来場先着順”ではなく、チケット購入先着順で参加できる、世間的にスタンダードな体制だ。なお、チケットの販売枚数は400枚。今回も『VRChat』システムの限界に挑むことが予想される。 ■ファッションECやJAXAとの共同案件も 拡大の続くバーチャルシーン 加熱が続くバーチャルファッション文化へ、アパレル業界から本腰を入れた動きが起こった。オリジナル3Dアバターやアバター向け衣装を展開してきたアダストリアが、バーチャルファッション特化EC『StyMore(スタイモアー)』を発表したのである。4月10日よりサービスインし、20以上の個人クリエイターと、アダストリアを含む3つの企業が出店中だ。 『StyMore』はEC機能だけでなく、Gugenkaのアバター作成アプリ『MakeAvatar』との連携にも対応しており、一部アイテムは購入後にアプリ上で着せ替えから『VRChat』へのアップロードまで一気通貫でおこなえる。ゲームエンジンの『Unity』などを持ち出す必要なく、誰でも気軽にバーチャルファッションを楽しめるプラットフォームなのだ。従来はゲームエンジンの操作や、一定以上のPC知識を求められていたが、こうしたハードルが大きく下がることで、カルチャーのさらなる加速がすすむ予感だ。 他方では、JAXA宇宙科学研究所がJAXA相模原キャンパス「宇宙科学探査交流棟」にて「はやぶさ2」 のタッチダウンをテーマにした体験型コンテンツを発表した。約2.7mのドームに映像を投影し、その内側に入って「はやぶさ2」が小惑星リュウグウにタッチダウンする瞬間を体験できるというものだ。まずは映像型コンテンツとして公開され、6月にはコントローラーで「はやぶさ2」を操作できる体験型コンテンツへと拡張予定だ。 擬似的なVR視点を体験できる本コンテンツは、JAXA宇宙科学研究所と東京藝術大学、そして天文仮想研究所(VSP)の共同プロジェクトとして開発されている。VSPは『VRChat』を中心に活動する有志の宇宙同好会で、昨年は大規模な博物館型コンテンツ「VR宇宙博物館コスモリア」を発表し、大きな話題を集めた団体だ。ソーシャルVR発のコミュニティがJAXAと共同でコンテンツを開発するという、意義深い事例だ。 国内の『VRChat』パートナー企業として、新たに株式会社TAMも加わった。東京理科大学の異分野交流イベントや、台湾エクセレンスの公式ワールドなど、多彩な案件を手掛けてきた企業である。新年度に入っても、日本では“地に足ついたメタバース”として『VRChat』へ視線が集まっている。
浅田カズラ