当事者ではない福永壮志監督が、なぜマイノリティーを描くのか 「アイヌプリ」
見えにくい事象に焦点を当てたい
福永監督はアメリカを拠点に16年間暮らした。その中で最も学んだのは、視点と題材の選び方だという。「なぜ、今、これなのか、明確な答えを持って作る。今までの作品には自分なりの理由があった」と話す。アイヌが題材の映画を2本作ったことについては「北海道の出身なのにアイヌをどれほど知らなかったかに気づき、きちんと知ろうと考えたから」と背景を述べた。アイヌを題材にした映画が近年増えていることについても聞いた。「僕の立場で言えることに意味があるかは分からない」とした上で、「認知度が高まるのはいいことだが、どれほどの繊細さで製作しているかは時に疑問だ」と語る。 長編デビュー作「リベリアの白い血」(15年)以来、マイノリティーを取り上げる作品が多い。「アメリカでアジア人として差別や偏見を経験したことは大きいし、現実への憤りや不条理を感じていることもある。今後も声が届きにくい人、見えにくい事象を映画という形で描いていきたい」と話した。
映画記者 鈴木隆