カスハラ深刻、銀行各社が防止策…「飲み物投げつけられた」「土下座を要求された」
銀行各社が、顧客から暴言や理不尽な要求を突きつけられる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の防止対策に乗り出した。金融業界は小売業に次いでカスハラ被害が多いとの調査結果もある。顧客の財産に関わる業務が多いうえ、犯罪防止対策として本人確認を厳格化させていることも被害の背景にあるとみられる。(井上絵莉子)
「STOPカスハラ 従業員に対する迷惑行為は、おやめください」
こんなポスターを店内に掲げる銀行が増えている。全国銀行協会が今年6月、作成したもので、カスハラの事例が記されている。
愛媛銀行は今夏策定したカスハラの対応方針に、警察や弁護士など外部専門家と連携して対応することを明記した。三井住友銀行は、顧客からの苦情の対応指導などに当たる品質管理部が、全国の支店を訪問し、勉強会を実施している。
大事なお金を扱う銀行の窓口では、顧客とのちょっとした行き違いでもトラブルになりやすい。
帝国データバンクが6月に実施した調査(1万1068社)では、直近1年以内にカスハラなどを受けたことが「ある」とした企業の割合は15・7%だった。業界別では「金融」が30・1%と「小売」に次いで2番目に多かった。
大分銀行は「訪問先で飲み物を投げつけられた」など、昨年度、カスハラに該当する事案が約30件発生した。預金の払い戻しのために窓口を訪れた男性客に、詐欺防止の目的で本人確認を求めたところ、「犯人扱いされた」と、土下座を要求された事例もあった。
本人確認厳格化が背景
本人確認は、マネーロンダリング(資金洗浄)や特殊詐欺など新たな犯罪が広がったことを受け、近年、手続きが厳格化されている。口座開設やクレジットカード申込時の本人確認は、健康保険証など顔写真のない公的書類だけでは認められず、他の書類の提示など追加対応が必要になった。「昔はこんなに面倒ではなかった」といら立つ高齢者もいるという。
ポスター掲示などの対策については「迷惑行為が発生した時に行員からも指摘しやすくなる」(大分銀行)といった効果が期待されている。