アインズ様、そして人間たちの生き様を堪能せよ!『劇場版 オーバーロード 聖王国編』は“IMAX推し”
『劇場版 オーバーロード 聖王国編』が、9月20日(金)の公開に先駆け、9月13日よりIMAXにて先行公開中だ。小説「オーバーロード」のアニメはこれまでテレビシリーズ、及びその総集編となる劇場版が展開されてきたが、完全新作の劇場版は9年以上の歴史で初となる。 【写真を見る】“オバロ”初心者でも大丈夫!ファンからの支持も厚い「聖王国編」を大スクリーンで体感せよ 異世界を題材としたノベルが多数アニメ化されている昨今。そのムーブメントの初期にアニメがスタートし、長い歴史を持つシリーズだが、鑑賞にハードルを感じる必要はなし。本作は「オーバーロード」の魅力がギュッと凝縮された内容のため、ファンが楽しめるのはもちろんのこと、シリーズ着手の足がかりとしてここから見始めるのにもいいだろう。近年では「葬送のフリーレン」や「宇宙よりも遠い場所」で名を馳せるMADHOUSEの新作として気になっている、という人もぜひ気軽にチャレンジしてほしい一作だ。 なお本作で展開される物語、そして戦いはシリーズでも屈指の規模であり、その迫力を味わうためにはIMAXでの視聴をおすすめしたい。今回はその理由と共に本作の魅力に迫る。 ■滅亡の危機に瀕した王国!“アインズ様”の動向は…? 「オーバーロード」は骸骨の姿をしたアンデッドの大魔法使いであるアインズが、成り行きによって世界征服に乗りだすというダークファンタジー作品。実はその“世界”とは、サービスを終えようとしていたDMMORPG(仮想現実体感型RPG)「ユグドラシル」とそっくりな世界であり、中身が単なるゲーム好きの冴えない青年だったアインズは、とても優秀かつ従順なNPC(ノンプレイヤーキャラクター)を従えて覇道を歩んでいく。 今回描かれる「聖王国編」は、原作小説でも上下巻に分けて綴られ、そのスケールの大きさからファンからの支持も厚いエピソードだ。城壁に守られて平和な時を過ごしていたローブル聖王国が、魔皇ヤルダバオトによって率いられた亜人連合軍の侵攻を受け、壊滅状態に陥るというショッキングなシーンから『劇場版 「オーバーロード」 聖王国編』は幕を開ける。 ■大軍同士による合戦もド派手かつ大迫力!IMAXで魅力は倍増 冒頭で描かれるヤルダバオトと聖王国騎士団の攻防を始め、本作ではいくつもの戦闘シーンがあり最大の見どころとなっている。人間と亜人が、平原や城の内外など様々な場所を戦場とし、武器や魔法を駆使して戦い聖王国を巡る物語を織りなすのだ。 特に、ほかとは一線を画す強者であるアインズや、本気を出して炎をまとう巨大な怪物と化したヤルダバオトが絡むシーンはド派手なエフェクトも飛び交って迫力充分。一方で、ぜひ注目してほしいのが人間と亜人の大軍同士による合戦だ。個々のキャラクターのCGクオリティが高く「手描きと区別が付かない」と言っても過言ではないほどで、IMAXの大スクリーンで観ると、より大迫力の戦闘に没入できるだろう。 ここまで挙げたような華やかなシーンではないが、後半のとあるシーンにも手に汗握らされた。夜間にとある2人が砦に侵入するシチュエーションがあるが、それまで賑やかなシーンが多かったぶん静けさが際立ち、「見つかるとまずい」という緊張感をキャラクターと共に体感できる。 この侵入シーンのように、夜という時間帯であったり、洞窟内というロケーションであったりと理由は様々だが、本作では画面が全体的に暗めのシーンは少なくない。しかしきちんと光源が用意されていたり、暗闇の中でも色鮮やかなためかしっかりと状況やキャラクターの動向を理解できる。先に挙げた合戦などの派手な戦闘シーンでも、決して「なにが起こっているかわからない」となることはなく、全体的にわかりやすく見やすい画面作りがされている印象だ。これもほぼ同じスタッフで長期シリーズを作っているからこその巧みな“仕事”だろう。 ■エグい描写も見逃さず!主題歌はOxT、ラストのラストまでお見逃しなく 「オーバーロード」の独自性の一つとしてダークさがある。これはアインズが治めるアインズ・ウール・ゴウン魔導国が、一般的なファンタジー作品では敵側となるモンスターや亜人によっておもに構成されていることが大きい。本作で、アインズは個人として人間と共闘することになるが、本シリーズの魅力であるダークさは変わらず“エグい”描写も少なくない。 それは戦闘における流血描写などだけでなく、思わず目を背けたくなるような、精神的なきつさを感じさせるシチュエーションもある。亜人が人間の子どもを盾にして聖王国に迫ってくる場面などは、その代表的な例だろう。だが、こうした表現が単なる露悪にならないのが「オーバーロード」。そこで生まれる恐怖や矜持などの感情が一般市民などのモブキャラクターなどに至るまで丹念に描かれているのだ。 こうした細やかな機微の積み重ねも含めて「オーバーロード」のドラマは紡がれる。ぜひ画面の端々まで大きく見られ、細やかな音もクリアに聴けるIMAXで鑑賞し、それらを丁寧に表現するキャラクターのちょっとした表情やしぐさ、声色などを逃さないようにしたい。 さらなる展開を期待させる、意外な(しかしシリーズファンにとっては納得の)“ヒキ”で本編が締めくくられる本作。その後にエンドロールを飾るのは、これまでのシリーズ作品に多数の楽曲を提供してきたロックユニット、OxTによる「WHEELER-DEALER」だ。策士や策略家といった意味合いのこの楽曲は、これまで通りエッジの効いたハードさがありながら、間奏では一転して美しい旋律をじっくり聴かせるパートも。激しい戦闘シーンとその間で紡がれる人間ドラマという緩急のついた『劇場版「オーバーロード」聖王国編』にふさわしい主題歌となっており、そうした抑揚を存分に堪能するためにも本作はIMAXで観るべき作品だろう。ぜひ最後まで聴いたうえで、「オーバーロード」初の新作劇場版を反芻してほしい。 文/はるのおと