KREVA、シーンのトップを走り続けた責任感 過去の自分を超える難しさ「ハードルが上がっている」
独立、ソロ20周年…今が人生で1番頑張っている
――歌詞を書くことに苦労されているというのが意外でした。 「どんどんハードルが上がっているんですよね。今までの人生で1番頑張ったのが大学の受験勉強だと思っていました。1日8時間ぐらい毎日勉強していたけど、最近の方がその時よりも頑張っていると思います。あの頃は、学費も払ってもらって、塾にも通わせてもらって、ひたすら勉強していればよかっただけ。今は会社の経営などいろいろなことをやりながら、楽曲作りもしなくてはいけないですからね。 もちろん、これが幸せな悩みだということは分かっています。でも俺のラップを信じてついてきてくれて、それを楽しみに待っている人の元に届けなければならない。俺がここでラップを書かなければ、それは届かないわけじゃないですか。そういったプレッシャーはあります。 曲作り、アレンジ、レコーディング、編集まで基本的に1人でやっています。もちろんやりたいからやっているんですけどね。今は1曲にかけるパワーや時間が増えました。ひたすら自分が作った曲を聞いて、どれが今の気分や世の中に合っているかを見極めていく。全く答えがないので、つらさを感じることもあります。楽しい3、苦しい7って感じですかね(笑)。トラックだけ作って生きていけるんだったらそれでもいいかなっていうぐらいです。でも、やっぱり俺がトラックの上で何を言うかが大事なんだろうなって」 ――どの時代の楽曲を切り取ってもKREVAさんの楽曲は誰が聞いても「KREVA!」と感じます。そこは意識していますか。 「いや、していないんです。でも、『Forever Student』のイントロを一緒に舞台をやっていた小林賢太郎さんに聞かせたら、イントロが流れた瞬間に『KREVAー!』って言ってました。すげぇうれしかったですよ(笑)。俺の好きなコード感や音色なんですかね。いろんな曲を作るけど、結局自分の好きなものが自信を持って出せるものなので、そうなっているのかもしれないです」 ――楽曲の反響などを気にすることはありますか。 「熱を持って感想をくれることが増えました。去年『Expert』という曲を出しましたが、単純な『良かったです』ではなくて、『歌詞のここがこういう風に染みました』と具体的な言葉をもらうことが多かったです。そういうのを聞くたび、『ちゃんと届けなきゃいけないな』って気持ちになりますね」 ――濃い感想が増えたのも、楽曲のハードルを上げているからこそですね。 「そうですね。それに、アルバム3~4枚目までの頃は、まだクラブミュージックやダンスミュージックでありたいという気持ちがあったから、意味よりも響きを重視していたこともあったと思います。でも最近は、より言葉や歌詞を、曲を曲として伝えたいという気持ちが強くなっています」 ――確かにKREVAさんの楽曲は歌詞がスッと入ってきやすい印象があります。 「その言葉はよく言ってもらえますね。だから、フリースタイルでも勝てたんだと思います。圧倒的に他の人よりも何を言っているかが分かる。だから届いていくんでしょうね。でも、洋楽で全く意味は分からないけど、聞いていると心地いいみたいなのもいいなと思うんです。そこに達するには圧倒的に韻を踏み続けるとか、もっとスキルを多めに出すとか、そういうのが必要なのかなとも思っていますね」 ――根底にあるモチベーションはどのようなものでしょうか。 「曲作りはマジでずっと楽しいです。ずっとゲーム好きな人って、ハードが進化して、映像や操作体験も向上していって、抜けられなくなっていると思うんですけど、トラック作りも同じなんですよ。どんどん機材が進歩して、しかもそれを使って自分で作るので、より根は深いかもしれないですね(笑)。曲作りはとにかく楽しい。今後もやめられないです」 スタイリスト:藤本大輔(tas) ニット、パンツ/Maison MIHARA YASUHIRO ネックレス/VUGAS カットソー/スタイリスト私物
中村彰洋