野上下郷集落の奥にそびえる山城 「仲山城」(後編) 山城ガールむつみ 埼玉のお城出陣のススメ
■諏訪神社の重要性を想像
また、仲山城北方の山の尾根道からも仲山城の重要性を感じることができます。仲山城の背後にそびえる山には、秩父方面と寄居方面を結ぶ東西に延びる尾根道が走っています。諏訪神社から、さらに奥に進むとこの尾根道に登ることができ、東へ進むと「陣見山」を経て、花園城の支城とも、鉢形城の支城とも伝わる虎ケ岡城(円良田城)に到達します。さらに、この尾根上の榎峠は、長瀞と児玉を結ぶ南北方向の山道の交差点にあたり、榎
峠を南下すると仲山城にたどり着きます。この尾根道の存在を考えると、このような交通の要衝地のほど近くに築かれた仲山城と、古くから城下に鎮座する諏訪神社の重要性を容易に想像することができます。仲山城背後の尾根道や峠を歩き、周囲の山々を眺めながら、かつての山城ネットワークを想像して歴史に思いをはせるのも楽しいです。
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仲山城は、良好に残る遺構や、城下集落の雰囲気から、十分に当時を想像して楽しむことができる城です。城下集落が形成されていたであろう谷の景観、南北朝時代の落城伝承や、それに伝説にひも付く野上下郷石塔婆などから、小さい城ながらも、存分に歴史を感じることができます。仲山城の登城路は、地元の方々によって、とてもきれいに整備されています。野上下郷石塔婆から、城下集落の奥へと向かうと、道中に「仲山城址」と書かれた案内板を目にすることができ、迷わずに主郭までたどり着くことができます。
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■山城ガールむつみ
歴史&山城ナビゲーター。歴史コンサルタント。歴×トキ(レキトキ)代表、三浦一族研究会副会長、一般社団法人城組副理事、千葉城郭保存活用会副代表、千葉県匝瑳市シティ・アンバサダーなど。
歴史やお城をテーマにしたイベントやツアー、講座を全国各地で多数手がける。県内でも歴史と城を使った町おこし、地域活性化の取り組みや、各地の歴史発信のための御城印発行プロデュースなどを行っている。(https://www.rekitoki.com/)