カレーの具を“知らない子”増加の背景にある懸念 心と体を使って経験できる場を作ることが重要
2024年、首都圏の中学受験者数は過去2番目に多く、4.7人に1人が中学受験を行うまでになりました。また、中学受験に臨む子どもたちを取り巻く環境は大きく変化しています。スマホやタブレットの普及は加速度的に進み、SNSは極めて当たり前のツールになり、遊び時間のほとんどを動画サイトの閲覧やオンラインゲームに使っている状況です。 関西で中学受験塾を営み、指導し続けている身として、今の世の中の進んでいる方向は、子どもたちの成長にマイナスの影響を与えているのではないかと考えています。その中で大事なのは、親が中学受験を通して、合格という目標だけでなく子どもたちの「根っこを育てる」という考えを持つことです。
本記事では灘中や神戸女学院中など、塾生の半数以上を最難関中学の合格へと導いてきた黒田耕平氏による著書『未来につなぐ中学受験 中学受験の価値は親の考え方で決まる』より、一部抜粋、再構成し、2回にわたってお届けします。2回目のテーマは「小学生にとっての教養とは何か」です。 ■教養とは、考え方である 「教養」という言葉にはさまざまな解釈があります。 多くの場合は「一般教養」と表現されるように、「知識」や「雑学」という意味合いに重きが置かれるケースが多いですが、「真の教養」とは、もっと価値や重みがあるものだと考えています。
たしかに子どもたちにとっては、知らないことや経験のないことが多いので、幅広い知識を身につけたり、思考力を鍛える機会を増やしたりすることは大切です。 しかし、インターネットが普及して、知識だけなら容易に手に入る時代において、知識そのものの価値は下がってきているのも事実。単に物知りというだけでは、教養がある人という評価はされなくなりつつあります。 教養とは何かというと、知識そのものというよりは、その人が身に付けた「考え方」なのではないかと思います。
さまざまな知識を土台にして、いかに自身の考え方を磨いてきたか、その過程を通じてどのような価値観を身に付けてきたかが、教養と呼べるものではないでしょうか。 こう考えると、役に立つと感じることだけではなく、失敗も含めて豊富な経験を積み重ねることが、教養を身につけるうえでは不可欠になります。 たくさんのチャレンジをし、たくさんの本を読み、たくさんの人と密なコミュニケーションをし、人と人のつながりを広げる努力をする。そういった、自分自身の頭と体を使った実体験の量、つまり「生きている過程」の充実が教養を育む土台となるのです。