<機動戦士ガンダムSEED FREEDOM>劇場版発表から18年 福田己津央監督が込めた思い 「全力を尽くした」
「普通の子になっているところもあって、両澤はこうしないよな……と思うところもあります。普通 の女の子に戻そうという自分の中の一つのテーマとして決めていたのですが、ラクスは今回、僕寄りにしてしまいました。あの辺の感覚は、両澤とは比較にならない。放送当時からラクスは難しくて、両澤に丸投げだった。あとは(ラクス役の)田中理恵さんに委ねようとか思いました。田中理恵さんが何とかしてくれる」
◇極端な思想はなくならない 形を変えて残っていく
「SEED DESTINY」では、プラント最高評議会議長のギルバート・デュランダルによって提唱された人類救済計画・デスティニープランが、キラたちによって“間違ったもの”として拒絶された。デスティニープランは、人々の遺伝子を解析し、その結果を基に適切な職業に就かせることで個々の差別意識をなくす……というものだった。時はたち、「SEED FREEDOM」では、いまだにデスティニープランを理想とする人々が残っている。
「なくならないですね。一度世の中に出てしまったものは、よくないものであっても、何とか形を変えて残っていきます。一度、夢見ちゃった人たちがいるから、なかったことにしようとはならない。そのうち、世の中に適用するように形を変えていくんだろうと思います」
極端な思想は人をひきつけるところもある。戦争のない世界を夢見ても、現実には困難だ。
「極端なものは人をひきつけますし、時代を進めます。ただ、それを放置してはいけない。極端な思想があり、反対側の極端な思想があって、それが常に入れ替わりながら、真ん中を探しつつ、歴史が流れているんじゃないかと思っています。一番まずいのは、そこで命のやり取りするような事態になることです。ただ、争いはなくならない。人類が2000年以上かけてなくならなかったものが、10、20年で何かが変わったくらいで、変わるものではない。それを夢見るのは理想家なのでしょう。自分もデュランダルのことを書いていると、思想が近付いていく。そうならないと書けないですから。キラたちのことを書くと逆の思想になるし、揺り戻しがあります。両澤はそこがうまかった」