大きさは? 役割は? 専門医に聞いた「子宮について意外と知らないこと」
4月9日は「子宮(しきゅう)の日」。子宮というと毎月の生理や妊娠・出産に関わる身近な臓器。そこでこの日にちなんで「子宮についてじっくり考えてみる!」をテーマに、子宮の役割とその一生、子宮が女性の人生にどう関わっているのかについて紐解いてみたい。生涯の月経回数が増えた現代女性は子宮の病気が増えている。後編では子宮の病気や受けるべき検診についても紹介していく。 【マンガを読む】妊娠中に子宮頸がん!?『コウノドリ』の名作エピソード限定公開中! 解説・監修は産婦人科医で、よしかた産婦人科 院長の善方裕美医師。日々を健やかに快適に過ごしていくためにも、自分のからだや子宮と「うまく付き合う方法」を知っておこう。
子宮とは赤ちゃんを守り育てる場所
子宮は、動物の女性(体の性としてのメス)だけが持つ生殖器。産婦人科院長であり、女性のヘルスケアの専門家である善方医師は、子宮についてこう説明する。 「子宮とは、文字通り『子どもの宮殿』という意味であり、生物学や医学的には子孫繁栄のための臓器です。子宮は出産まで赤ちゃんを一人前に育てる大事な場所。毎月の生理も、胎児のベッドとなる新鮮な内膜を用意するために起きていることです。一方で、赤ちゃんを育てるための臓器であるため、実は摘出しても、妊娠出産に関すること以外、体への影響は大きくはありません」 現代女性のライフルタイルは多様化し、さまざまな生き方を選べるようになった。 善方医師は「子宮は、これから妊娠・出産を考える方には大事に守りたい場所になるでしょうし、子育てが終わった世代には毎月の生理が煩わしく感じたり、子宮筋腫などの疾患に悩まされた人から見ると厄介者にも思えたりするかもしれません。年齢やライフスタイルなどによっても受け止め方は変わっていく。それが子宮と言えるかもしれないですね」とも。
子宮はどんな形? 大きさ?
目には見えない子宮は、妊娠すると何倍にも膨らむ不思議な臓器でもある。まずはその形や役割について知ろう。 子宮は骨盤内にある筋肉でできた臓器。正面から見ると、逆三角形の電球のような、または風船を膨らませたような袋状の形をしている。また「子宮体部」と筒状の「子宮頸部」からなり、体部は頸部に対して前傾姿勢をとるように位置している。 子宮体部は、出産まで赤ちゃんを大事に育てる保育器のような場所だ。外側は漿膜という薄い腹膜で覆われその内側は平滑筋という筋肉でできている。成人女性の子宮体部の普段の大きさは鶏の卵1個分くらいで、高さ7cm~9cm、幅4cmほど。重さは約40~50gといったところ。 「それが妊娠時には、赤ちゃんの成長に合わせて長さ30cm~40cm、幅25cmの大きさまで膨らみ、臨月には羊水なども含めた重さが5kgを超えます。でも出産後は6~8週間で元の大きさに戻っていきます。昔の女性は5~6人出産するのも当たり前でした。子宮はかなり頑丈な臓器と言えますね」 柔らかくてよく伸びるのも、子宮が生殖器であるがゆえ。とりわけ上部の筋肉は分厚く、上方向によく伸びる構造をしているのだとか。 「風船を膨らませると、上の部分から伸びて大きくなっていきます。子宮も同じように、妊娠すると胎児の成長に合わせて横にも伸びますが、それ以上に上へ上へと伸びていきます。どんどん膨らんでも子宮が裂ける…ということは自然経過の中(※)ではありません」 ---------- ※陣痛促進剤で過強陣痛などにならなければ起こりません。 ---------- 新品の風船を膨らませるのには息を強く吐く必要があるけれど、一度膨らませた風船は、空気を抜いてもゴムが柔らかくなって少しの息で膨らみやすくなる。 「妊婦の子宮も同じ原理なので、一度出産を経験すると伸びやすくなっています。2回目以降の妊娠ではお腹が大きくなるのが1回目よりも早く感じられるはず」と善方医師。とにかく丈夫で伸縮自在なところが子宮の強みと言えそう。 一方、子宮の内側に目を向けると、子宮内膜という粘膜で覆われている。子宮内膜は、女性ホルモンの働きに応じて厚みが変化し、月経サイクルに合わせて増殖と剥離(月経)を繰り返す。妊娠が成立した時には、内膜が受精卵を育むベッドの役割をする。ちなみに妊娠とは、受精卵が子宮に到達し子宮内膜に潜り込んで根を張ること。内膜に「着床」して初めて妊娠成立となる。