利上げどうなる? 3月米雇用統計で、だんだん分かってきたFRBの計画
本稿では世界中の市場関係者の関心事である連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ計画について解説しますが、それに先立って3月の雇用統計を解説したいと思います。いわずもがな、雇用統計は米国経済を最も綺麗に映し出す経済指標の一つであり、それを正しく現状把握することが金融政策の予想に不可欠だからです。(解説:第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
3月米雇用統計、失業率は低下
4月7日に発表された3月米雇用統計によると非農業部門雇用者数(NFP)は前月比+9.8万人と市場予想(+18.0万人)を大幅に下回りました。もっとも、内容をみるとネガティブ・サプライズという表現が馴染むほど弱くはありません。3月の減速は暖冬によって実勢以上の強さが示された2月(+21.9万人)からの反動と理解され、労働市場の本質的な変化を示すものではないと考えられます。実際、天候要因を受けやすい建設業は2月の+5.9万人から3月はわずか+0.6万人に減速していました。 そうした振れを均すため移動平均の数値を確認すると、3カ月平均は+17.7万人と堅調で、6カ月平均も+16.2万人と失業率を安定的に低下させるに十分なボリュームを維持しています。また、失業率が4.5%へと0.2%ポイント低下し、2007年5月以来の低水準を記録すると同時にU6失業率(9.2%→8.9)も顕著に低下しました。U6失業率とは、フルタイムを希望しているにもかかわらずフルタイムの職が見つからず不本意ながらもパートタイムで就業している人や職探しを諦めた人などを失業者とみなして算出した数値で、一般的な失業率(U3失業率)よりも労働市場の“質”を分析するのに優れています。その低下にFRBは満足したことでしょう。
平均時給にも伸び FRBはどう動くのか?
雇用統計は、雇用者の“数”に加えて、賃金などインフレ指標も重要です。市場参加者が注目する平均時給は前年比+2.7%と市場予想に一致して、ここもとのトレンドである2%台後半の伸び率を維持しました。労働市場が逼迫している割に賃金上昇率が加速する気配に乏しい点は懸念材料ですが、失業率が完全雇用水準に到達するなかで(転職のための)自発的離職率が上昇していることなどに鑑みると先行きは緩やかに加速が見込まれます。