利上げどうなる? 3月米雇用統計で、だんだん分かってきたFRBの計画
以上が雇用統計についての解説ですが、今回の結果はFRBの金融引き締めを強く支持するような内容ではなかったにせよ引き締めを正当化するには十分といったところでしょう。筆者は4月5日に発表された3月連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の内容から判断して6・9月連邦公開市場委員会に追加利上げ、12月FOMCで保有証券の再投資停止(縮小)を決定するというシナリオを有力視し始めましたが、その考えに変更を迫るものではないと判断されます。ちなみに保有証券の再投資停止が意味するところについては2月21日配信の『もう一つの利上げは3.75%? FRBの「バランスシート縮小」にも要注意』を参照ください。 そうしたなかで注目すべきは、雇用統計発表後のダドリーNY連銀総裁の発言です(同氏はFRB中枢メンバーで発言力大)。ダドリー総裁は「4兆5000億ドルに膨らんだバランスシート(BS)を縮小する際には利上げを避けるだろう」としたうえで、「利上げ計画を単に『小休止』する可能性がある」との認識を示しました。これは追加利上げとBS縮小開始(保有証券の再投資停止)を同時に決定しないという連邦準備制度(FED)の行動計画を暗示しているほか、「小休止」がBS縮小開始直後に追加利上げを再開するとの含意であると推測されます。要するにBS縮小が2017-18年の利上げ計画に影響を与えないというメッセージでしょう。これは上述した筆者シナリオの実現可能性をサポートしているように思えます。以上をまとめると、FRBは2017年6・9月FOMCで追加利上げを実施した後、12月FOMCで保有証券の再投資停止を決定、その後2018年入り後は3~4回の利上げを実施すると予想されます。これは現時点で市場参加者が想定しているよりも積極的な引き締め計画であると思われます。
(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。