殿が独立、妻は出て行き…“「玉袋筋太郎」っぽさにとらわれていた”50代で得た気づき(レビュー)
■後半戦をいかに充実したものにできるか
無論「美しく」は外見のことではない。著者は筋金入りの「アンチ・アンチエイジング」原理主義者で、年齢に逆らう気はゼロ。銭湯で見た縄文杉のようなじいさんのキンタマ袋の年輪のように刻まれた皺に完全なる自然体の神々しさを感じ、あんな風に枯れたいと憧れたという。ロード・トゥ・玉袋。 《イキリ過ぎることなく、やらかし過ぎることなく、高望みもせずに、これからは、身の丈に合った生き方で歩いていきましょうや》と説く本書。イキりたい盛りの若者にはピンと来ないし、すでに老いた人にも響かないかもしれない。でも、著者と同世代には、かなりのシンクロ率を誇る気がする。 自分の人生がどうやら若い頃に思い描いていたものとは違うことに気付かされる50代は、己の曲がり角。後半戦をいかに充実したものにできるか、老害にならずに済むか、いい最期を迎えられるか。……「美しく枯れる」の喫緊性を理解すべき世代が耳を傾けるべき玉音がここに。 [レビュアー]今井舞(コラムニスト) ライター。東京生まれ。小学校から大学までバカばっかりのエスカレーター式女子校にて観察眼を鍛えながら過ごす。大学在学中にライター業を開始。美容を中心にファッション、インタビューなど何でも屋として活動中に、タレント格付け本『女性タレントミシュラン』(情報センター出版局)を出版。裏バイトで始めたつもりのテレビ批評がいつの間にか生業となり、現在に至る。 協力:新潮社 デイリー新潮 Book Bang編集部 新潮社
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