弾き手はプロドラマー おわらに魅せられ仲間入り 神奈川から地方衆に
●波多江さん「これからも届ける」 現役のプロドラマーがおわらに魅せられ、豊かな音色で「越中八尾おわら風の盆」に情緒をもたらす地方衆(じかたしゅう)に仲間入りした。ドラマーとして国内外で活躍する波多江健(はたえたけし)さん(55)=神奈川県川崎市=は9年かけて技術を磨き、今年から西町で三味線の弾き手としてデビューした。波多江さんは初めて袖を通す浴衣に「伝統の重みを感じた」と気を引き締め、町民と一緒に優雅な音色を奏でた。 波多江さんは17歳でドラムを始め、米バークリー音楽大で音楽の技術や理論を学んだ。1998年に帰国して音楽活動を再開し、ジャズやロック、ポップスなど幅広いジャンルのバンドに参加している。 2014年に参加したコンサートで「風の盆恋歌」のドラムを演奏する機会があり、越中八尾おわら風の盆への興味が高まった。15年に風の盆を訪れた際にとりこになり、地方衆の息の合った演奏に引かれた。 毎年足しげく通うようになり、八尾町西町の「割烹一力」おかみの大西美智子さん(77)や八尾町の地方衆から手ほどきを受け、9年かけて三味線の技術を磨いた。「割烹一力」には15年に書いた色紙があり、「おわらの地方デビューを目指します」と決意表明がつづってある。 昨年から夜流しやおわら演技発表大会に参加し、今年の風の盆から西町の浴衣を着て、地方衆の一員として活動に加わった。波多江さんはドラマーとして活動する時とは別世界の緊張を感じたとし、「西町の浴衣の重みや、住民の皆さんのプライド、美意識を強く感じた。長年積み重ねてきた伝統を意識する」と話した。 三味線は未経験だった波多江さんは、おわらならではの「間(ま)」の共有や演出の難しさを語り、「普段から皆さんと一緒に音を出さないと身につかない」と語った。温かく迎え、指導する町民に感謝し「町の人々全てが先生。これからもずっと学び続け、西町の一員としておわらを届けたい」と話した。 西町の岩見樹総代は「おわらの輪が広がってくれてありがたい」と話した。