「研究室では段ボールで寝るのが当たり前」では「女子枠」の意味がない…内田良教授と考える“偏り”と“男性優位”の解消法
河合塾の全国統一プレ共通テスト(2023年12月)によると、理工系を志望する女子の割合に増加の兆しがみられるという。。河合塾・主席研究員の近藤治氏は、「『色々なキャリアを目指したい』という女子中高生が増えてきた。特に「女子枠」の設置で、女子の獲得に積極的な大学で、志望者が増えている傾向がある」と話す。 ━━間口が広がり、“理工系女子”増加の兆しが見えてきた? 「非常にいい傾向だが、やはり入学後に『なんだこの男社会は』とならないように、入学後をどう考えていくかも大事だ。1~2年で世の中が動くとは思わないが、『先輩が理系に行った。私も』となるように、続けていくことで下の世代が理系を目指すきっかけになると思うので、中長期的に期待したい」
『なぜ理系に女性が少ないのか』(幻冬舎新書)の著書があり、科学技術社会論などが専門の東京大学・カブリ数物連携宇宙研究機構の横山広美教授は、「母親世代に理系が少ないため、娘の理系進学を心配するという悪循環があった。理工系の会社が女性が多くて働きやすく長く勤められると分かれば、親の支援が得やすくなる。今は社会全体の動きとして理工系、特に情報系のニーズが高く、就職状況も非常に良いことから、子の進学に前向きな親が増えている」と分析している。 ━━理工系は下積みや研究の期間が長いイメージだが、実際の環境はどうなのか? 「下積みの年月が長いだけではなく、実験をしていると1日中ずっと張り付かないといけないこともある。男社会の文化では段ボールの上に少し仮眠をとって、、また実験に戻るといった話もたくさんある。そうではなくて、男女ともに快適に実験できる環境も必要。とりわけ女性の場合には妊娠、出産もあるので、その点に配慮した学校・施設の作り方も考えていかないといけない」 女性の研究者にはライフステージの変化に伴う空白期間をどう埋めるかという課題があり、孤独に陥りやすいという声も少なくない。 「理系特有の実験の働き方で、現場に出られる人はずっとできるが、体調面で一度離脱せざるを得ないとき、それが自分に不利益にならないかというところがある。現場に縛られるという観点から、女性研究者、あるいは学生の生活の仕方を考えていかないといけない」 ━━今、理工系でも情報系のニーズの高まりにより学び方に広がりも― 「理系は男社会で小難しいという考え方ではなく、学部間も繋がって、学際的な研究のあり方がすごく重視されている。研究だけでなく、実際の生活、様々な企業と連携をどう作っていくかを含めて、みんながどう繋がっていくのかが大事。そういった意味でも、単に従来の理系イコール実験のようなイメージではなく、情報系を含めて広く理系の学問を捉えてもらえたら嬉しい。文系は逆に女性が多くて男性が来れていないという現状もあるので、本当に皆がそれぞれやりたいことをやれるということが必要だと思う」 (『ABEMAヒルズ』より)