「音楽を心から表現できたら。音楽家の仕事は自分がどう呼吸するか、どう歌うかで曲の良さを伝えることです」と話す山根一仁

中学3年のときに日本音楽コンクールで優勝し、たちまち注目されたヴァイオリニスト、山根一仁（29）。高校在学中から最前線で活躍し続けているが、CDの録音は断ってきた。それが今月、バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ＆パルティータ」全曲のCDを発売する。満を持してだが、やや遅いCDデビューとなる。ヴァイオリニストならだれでも手がける名曲。この大きな挑戦に山根は「若い頃は頑固でした。20代になり気持ちが変わりました。これまでの道のりの集大成です」と話した。11月にはリリース記念のリサイタルを行う。 ■躊躇なく断った 「CDは聴いていましたし、CDから学べたこともありました。しかしCDで感動したことがないのです。CDは作られたものでしかない、生で聴きたい、と思っていました。録音のオファーはありましたけど、躊躇なく断っていました。傲慢ながきでした（笑）。20代になり、やりたい音楽の方向性や気持ちが変わっていきました」という。 山根の、日本音楽コンクールにおいて中学生の1位は26年ぶりの快挙だった。全額免除特待生として桐朋女子高音楽科に入学。ミュンヘン音楽演劇大では指揮者でもあるクリストフ・ポッペンに師事した。 「ミュンヘンには6年いました。はじめはフランスに行きたかった。ベルリンは曇りがちだから嫌とか、このときも留学先を場所で選ぼうとするなど傲慢でした（笑）。ドイツでも日本でもヴァイオリンの教え方は一緒です。日本にも素晴らしい奏者がいますし、先生もいます。ただクラシックはヨーロッパで生まれた音楽。地下鉄の駅でクラシックが流れるなど、土地に根付いています。ミュンヘンにはよいオーケストラ、オペラがあります。日本の音楽界は先人たちが続けてやってきて、受け継がれているいい土台があります。だから発展の余地があるのです。ミュンヘンにもうちょっといてもいいかな、と思いましたが、結構日本が好きだということに気づいたのです。日本で音楽をしたい。日本でやるべきことがあると思いました」と話す。 ■音楽をしたい