コーウン・マリン、船員の定着率向上へ。独自ローテ・固定配乗、「重要な経営資源」
東ソーグループの船舶管理会社コーウン・マリンは「船員の人的資本経営」を掲げ、船員の定着率の向上に注力している。船上勤務と休暇のサイクルについて一般的な「3カ月乗船・1カ月休暇」よりも間隔が短くワークライフバランスを重視した「23日乗船・7―8日休暇」を採用しているほか、乗船する船舶が原則変わらない「固定配乗」などの取り組みを長年講じてきた。山下良一取締役人事担当部長は「船員は替えの利くコストではない。船を運営する上での重要な経営資源だ」とし、配乗船員のエンゲージメントを高める考えを強調する。 コーウン・マリンはカセイソーダ専用船を中心に内航船7隻を保有し、同じ東ソーグループの東ソー物流向けの定期用船を主体に事業を展開している。配乗船員は60人、陸上役職員は22人に上る。 コーウン・マリンは「船員の人的資本経営」を標榜(ひょうぼう)。その代表的な取り組みが船員のワークライフバランスに配慮した配乗ローテーションの編成だ。 「3カ月乗船・1カ月休暇」のサイクルが一般的とされる内航海運業界において、同社は「23日乗船・7―8日休暇」や大型液化ガス船の場合には「45日乗船・15日休暇」を採用し、適切なワークライフバランスの実現に細心の注意を払っている。 山下氏は「中途入社の船員に対して、前職を退職した理由をヒアリングすると、予期せぬ乗船期間の延長や休暇の短縮の積み重ねが大きいと分かった。そこでワークライフバランスに配慮した『23日乗船・7―8日休暇』などを採用し、これを徹底している。緊急時以外はこのローテーションを死守するようにしている」と説明する。 ■船質の維持・向上も 加えて、同社は乗船する船が原則変わらず、転船のない「固定配乗」を実施している。 「乗り続けることで、船員が『自分の船だ』と強く認識し、愛着を持ってくれる。そういう船はメンテナンスが行き届いている」(山下氏)といい、船員の定着だけでなく、船質の維持・向上にも寄与しているようだ。 固定配乗では原則同乗する船員も変わらない。山下氏は「結束力、会社への帰属意識も高まり、メリットは大きい」と語る。 このほか、同社は奨学金の代理返済や独身寮の完備、法定外健診や福利厚生健診の充実、アンガーマネジメントやパワハラ防止に関する心と体の健康管理にも注力し、「船員の人的資本経営」を追求している。 一連の取り組みが奏功し、同社は船員を着実に確保。それに伴い保有船も2019年以降、段階的に増やしてきた。25年にも499総トン型の特殊タンク船1隻の新規整備を計画しているという。
日本海事新聞社