山田涼介主演の映画『サイレントラブ』。内田英治監督に聞いた制作秘話とキャストの魅力
山田涼介×浜辺美波による、世界で“いちばん静かな”ラブストーリー。声を出すことをやめた青年と、視力を失った音大生が過ごす、かけがえのない日々を描く。過去の出来事から声を捨てた蒼(山田涼介)は、ある日、事故で視力を失い絶望の中でもがくピアニスト志望の美夏(浜辺美波)と出会う。次第に惹かれ合い、少しずつ距離を縮めていく2人だが、思いがけない運命が待ち構えていたーー。原案・脚本・監督を務めた内田英治監督に、制作秘話や作品を通して伝えたかったこと、キャストの魅力を伺いました。
ーー声を捨てた青年と光を失った音大生の純愛を描く本作。物語が生まれたきっかけやこの作品で描きたかったこととは? 自分が思春期を送った時代に比べ、今の時代は情報が視覚面でも音の面でもすごく多い。そんな中、見えない、聞こえないという最小限の状況下で伝えられる愛情って何だろう? 人間が本来持つ純粋な愛の形とはどんなものだろう?と考えたのがこの作品の始まりです。確かに蒼は言葉を発さず、美夏は事故で目を負傷しますが、“障壁を乗り越える愛”にはしたくなかった。あくまでも本作で描きたかったのは、コミュニケーションの手段が極端に制限された中で気持ちを伝え合おうとする2人のシンプルな愛。 ただし、そういった作品が映画として成り立つのか、不安はありましたね。誰も役を引き受けてくれないんじゃないかって(笑)。役者さんもやっぱり、セリフのない役はやりづらいと思うんです。と同時に、役者さえしっかりしていれば、セリフがなくても十分伝わるんじゃないかという思いもあって。“目で語る”なんて言葉自体、今ではあまり使われなくなりましたが、登場人物が目で語るような映画になればいいなと思っていました。
山田涼介がセリフのない難役で見せた新たな一面
ーー主演の山田涼介くんのキャスティング理由や役者としての魅力を教えてください。 山田くんは基本的に声を使う歌手であり、役者ですから、言葉を発さない蒼という役に対してはチャレンジする意識もあったと思います。僕は山田くんの作品に限らず、日本のテレビ番組や映画にあまり詳しくなくて。キャスティングの過程で彼の名前が挙がったときも、作品を通して見るのではなく、素の彼を知るところから始めました。 実際にお会いした山田くんは、すごく物静かな青年。シャイになっていたのかどうかはわかりませんが、静かに佇む姿に共感を抱きましたし、彼なら蒼にぴったりだと思いましたね。ベラベラとしゃべるタイプではなく、自身について発する情報量がとても少ないのは山田くんも蒼も一緒。でも、その中には気迫ややる気、演技に対する思いが確実にあって。役者自身が持つ表現力に懸けたい気持ちが僕にもありましたし、彼が本来持っていながら、今まで出すことのなかったものを出す機会になったんじゃないでしょうか。ご覧いただく方にとっても新鮮な山田涼介が映画から感じられるのではないかなと思います。