山田涼介主演の映画『サイレントラブ』。内田英治監督に聞いた制作秘話とキャストの魅力
蒼と美夏の自然な感情から生まれた名シーンの数々
ーー山田くんと浜辺さんは、蒼と美夏の人物像や2人の関係性をどのように作っていかれましたか? また、監督は、そんな2人とどう向き合っていたのでしょう? 最初のうち、蒼と美夏の感情はなかなか混じり合いません。物語が進むにつれてようやく心が通い始めるわけですが、変化していく2人を第三者目線で見るのはとてもおもしろいことでした。山田くんと浜辺さんは熱すぎもせず、冷めすぎもせず、粛々と役の変化に向き合っていましたね。山田くんはたぶん、プライベートにも役を持ち帰るタイプなんじゃないかなと。浜辺さんは役について猛勉強するタイプ。忙しいのにどこでやってるのか不思議ですが、撮影時には出来上がってるんです。撮影現場では明るく振る舞っていましたが、見えないところですごく努力していたと思います。 彼らにはガチガチに役作りをして撮影に臨むのではなく、その場で生まれたものを大切にしてもらいました。傷ついた美夏に蒼が触れるシーンやラストシーンもそうで、役の心情に寄り添った2人の芝居によって生まれたシーンも多くありました。山田くんも浜辺さんもその場で生み出してくれるものが多い俳優さんだと言えますね。 ーー心に傷を抱える蒼を演じた山田くんの芝居で特に印象に残っていることや驚いたことはありますか? 美夏に大学の同級生だと勘違いされた蒼は、彼女の夢を叶えるため、ピアノの上手な非常勤講師の北村(野村周平)に『自分の代わりにピアノを弾いてほしい』と頼みますが、蒼の中には彼に対する劣等感があります。世の中的にはマイナスなものとして捉えられがちですが、僕は劣等感という感情にこそ人間らしさを感じるし、そういった感情を山田くんは人間味たっぷりに表現してくれました。旧講堂で一緒にピアノを弾く美夏と北村を窓ガラス越しに見るシーンなんて、表情があまりにも切なくて、脚本を書いた僕でも泣けてきましたから。悲しい顔を見ていて胸が痛くなりました(笑)。 山田くんの演技で印象深いシーンと言えば、蒼の過去を描いたシーンもです。乱闘シーンで相手に向かっていくときの目が真っ赤で。あれ、CGなどではなく、感情の変化とともに目が真っ赤になっていったんですよ。どうすれば、ああなるんでしょうね。すごいですよね(笑)。
渡邉ひかる