「結果より過程」常識覆し続ける大谷翔平の〝鋼のメンタル〟を作る思考法
米大リーグ、ドジャースの大谷翔平(30)が、自身3度目となる最優秀選手(MVP)に輝いた。投打の二刀流挑戦に始まり、アジア人初の本塁打王獲得、大リーグ史上初の「50本塁打、50盗塁」達成…。なぜ大谷は、不可能とされたことを成し遂げられるのか。常識を覆し、大舞台で結果を残せる〝鋼のメンタル〟について、アスリートの心理学に詳しい追手門学院大の児玉光雄・特別顧問(臨床スポーツ心理学)に聞いた。 【写真】大谷翔平は真美子夫人や愛犬デコピンと受賞喜ぶ 専門局の番組に出演 ■常に前向き 「単純に2連勝すればいいゲーム。後がないっていう感覚が僕にはない」。10月8日、ワールドシリーズ進出をかけたパドレスとの地区シリーズ(5回戦制)第3戦。1勝2敗と敗退の瀬戸際に追い込まれた際、こともなげに放った言葉に、児玉氏は大谷のすごみを感じたという。「彼の哲学は若い頃から一貫している。常に前向き。ネガティブなことも、自分の中でポジティブに変換してしまう」。この思考が、大谷を超一流の大リーガーにまで押し上げたとみる。 大谷が重要視するのは、結果よりも過程だ。漠然としたゴールを指す「結果目標」に対し、ゴールにたどりつくために必要な「行動目標」に常に重きを置いているという。「打撃なら、飛んできた球をバットの芯でとらえて意図した角度ではじき返すことが彼の目標。本塁打はあくまで、ご褒美に過ぎない。ご褒美を得るために、正しい行動を積み重ねていく中で結果的に欲しいものを得ている」と児玉氏は分析する。 ■一喜一憂しない 体の動きは脳と密接な関係があるという。「『ここで打たなければ』『ここで打ちとらなければ』というマスト(するべき)思考に陥った時点で、筋肉の動きは阻害される」と児玉氏。望む結果が得られなくても、大谷にとっては正しい行動のためのヒントを得たに過ぎない。結果に一喜一憂しないメンタリティがあればこそ、大舞台でも自身の実力を発揮できるのだろう。 2001年にMVPに輝いたイチローさんも同様の思考の持ち主で、「しつこいくらいに突き詰めて、成功するまでやめないという点で非常に似通っている」。数々の偉業も、大谷にとっては「結果として常識破りになっているだけなんでしょう」と児玉氏は笑う。周囲の喧噪(けんそう)をよそに、できることを一つ一つ積み上げた結果が、3度目のMVPに結びついた。(川峯千尋)