「権威者がいない空間」…台湾の敏腕デジタル担当大臣オードリー・タンが語った、インターネットが繁栄した納得の理由
コロナ禍において国民全員にマスクを配布するシステムをわずか3日で構築し、世界のグローバル思想家100人にも選出された若き天才オードリー・タン。自身もトランスジェンダーであるタン氏が、日本の若者に向けて格差やジェンダー、労働の問題からの「解放」をわかりやすく語る『自由への手紙』(オードリー・タン著)より抜粋してお届けする。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『自由への手紙』連載第24回 『完璧だった台湾の感染対策は「コレ」から始まった! …変革を起こすために必要な「大前提」とは? 』より続く
インターネット空間の統治機構
長く続いてきたヒエラルキー構造は、もはや終焉を見ました。 誰が上でも誰が下でもなく、指示系統も命令の権限も存在しなくなります。 「ヒエラルキー構造が終焉したとき、リーダーシップはどこに見いだせるのでしょうか?」と尋ねられたなら、私はインターネットの話をします。 インターネットはまさに「ヒエラルキーのない組織」です。 「インターネット空間の統治機構」と私たちが呼ぶものは、「実際のところ、規約策定者に権力はない」という大まかな合意にもとづいています。 たとえば、インターネットプロトコル(IP)の策定者には、現実的な力はありません。 あるいはプラットフォームを設計するために、陸軍も海軍もいりません。 それでも私たちは検索に、SNSに、メールに、動画を見るために、日々インターネットプロトコルを使い、そのルールに従っています。 これが意味するのは、通信事業もまた誰かに強制されることなく、このインターネットプロトコルに準拠している、ということです。 インターネット上にはIETFというインターネット上の国際標準を策定する組織もあり、IETFは「リクエストフォーコメンツ(RFC)」という技術仕様の保存と公開をしています。 インターネット上で誰もが見られるようになっているから、IETFが力をもつことはありません。